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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【構造論】

橋本主税
初めて構造論に触れたのはもう20年以上も前だ。
とっかかりが柴谷さんだったからと言うのでもないだろうが
とても難しかった記憶がある。
柴谷さんは簡単な事を難しく書くと聞いたのはその後である。

とにかく新鮮な感覚を持った。
こんな考え方があるのか、と雷に打たれた。
自然に丸山先生の解説書へと向かった。
ソシュール研究の第一人者である。
丸山先生の文章はわかりやすく
途中で止まる事は無かったのだが
でも、結果としては何も理解できなかった。

その他の先生方の本も目につくままに読んでいった。
諸先生が一所懸命に「構造」について解説している。
読んでいる時には分かったような気になるのだが、
読み終わってみると?????の繰り返しだった。

あるとき、構造論とは全く別の事を考えていた。
純粋に分子生物学の研究についてデータの整理をしていたのだ。
その瞬間、全てがつながったような気がした。
上手く言えないが、ジグソーパズルのピースが
すべて落ち着くところに落ち着いた。
頭の中に「かたち」ができたのである。

すぐに構造論の書物を読み返した。
「わかる」と思った。
全てがすんなり腑に落ちる。
なるほど、これがかたちなんだと
身をもって体験した。

いま私は、阪大などで講義を持っている。
研究員レクチャーなどで研究館でも話をさせてもらっている。
構造論など一度も聞いた事の無いであろう方々に
かたちの考え方を話している。
その考えから生きものを見るとどうなるのか
ゲノムってどう考えたら良いのか
そういう事を話している。

でも、学生さんたちも20年前の私同様に
チンプンカンプンなのだろうなあと思う。
でも、私のような変わった講義に出会うのもいいと思う。
それがきっかけになって何かを考え始めたら
それから始まる思想だってあるだろう。
それで了解である。

しかし、その後の質問で全く誤解されている事を知らされると
自分の日本語能力の無さにショックを受けるのも事実である。
しかし、自分の体験からいうと、
同じ書物でも読むたびに違った意味に感じられるのだから、
たとえ全く同じ話であっても
新たに聞いてみると違った意味を持ってくるかもしれない。
思索とはここから始まるのではないだろうか?

1月12日に研究員レクチャーを行います。
ぜひ脳みそを疲れさせにお越し下さい。




[脳の形はどうやってできるのかラボ 橋本主税]

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