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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【クモ胚で起こる波の分裂】

小田広樹 クモのどこがおもしろいかと言われたら、いろいろ答えはあるけれど、なかでも一番は、遺伝子発現の、今にも動き出しそうな幾何学パターンだと思います。直接その動き(変化)を見れたらどんなに楽しいことかと思いますが、残念ながら、クモでは生きたままで遺伝子の発現を見る方法がないので実現しません。
 以前、生命誌カードでも紹介しましたが、最近、大学院生の金山さんが、クモの頭部の体節形成で縞状のパターンが口を開くように前後に分裂することを見つけました。遺伝子の発現を波として考えると、ひとつの波のピークがあるタイミングで凹み始めて、そのままスムーズに2つの波に分かれていくのです。前側の波はもう一度同じような過程を経て2つの波に分裂します。最終的に、頭部には合計3つの波ができます。
 なぜそんなことが起こりうるのか? 動きを見ることの楽しさはきっと想像力が刺激されるからでしょう。球場とかで沸き起こるウエーブ(波)のように、もしウエーブの分裂を人間がやろうとしたら難しいだろうな・・・と。
 そこで、波が分裂する仕組みを知りたいと思い、「数理」の本をいろいろと調べていたら、波の分裂を表現しうる反応拡散方程式があることを知りました。勉強中のコンピュータプログラミングでその方程式を解いてみたのが下の動画です。波が頂点付近から凹んで割れているのがわかりますか? たまたまだとは思いますが、クモで発見した現象と似たような動きが見えていることに感動しています。
 まだまだ勉強不足で1次元のパターンしか作れませんが、クモの幾何学パターンをコンピュータ上で動かせるようになればと思います。

[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 小田広樹]

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