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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【クリとナナフシ】

村田英克
 館では、アマミナナフシを飼っています。これは研究のためでなく展示ホールで、ちょうどエントランスを入って左手すぐの大きめのガラス水槽に薄く土をひき、ふだんはカシの葉を与えて飼育しています。いろいろな展示の中ではかなり地味なものですが、訪れる人を和ませてくれるナナフシ水槽は、結構人気のスポットです。
 ナナフシは擬態をする昆虫です。体の形は枝にそっくりで、1対の前脚をすっと前へ延ばしてじっとしていれば、きっと草むらの中では周囲の枝と区別がつかないことでしょう。体の色は卵から生まれたばかりは皆緑色、何度か脱皮を繰り返し大きくなるのですが、最後の脱皮が終わる頃、雄は茶色となり、雌は緑色のままです。しかも雌のほうが体も大きく長生きなようです。
 今は梅雨あけ頃の卵からぼつぼつ孵化したまだ育ちざかりのナナフシ達が25匹くらい、わらわらしています。カシの葉は、敷地内に植樹されている木の枝をちょこちょこ頂いてます、今だとドングリが付いてきます。カシは常緑照葉樹なので冬場も安心です、それでほぼ一年中カシの葉を与えているのですが。ちょっと前の話ですが、ナナフシも、たまには他のものも食べたかろうと思って、Ω食草園からノイバラとクリの枝をあげてみました。これが結構気に入ってもらえたようで、Ω食草園の剪定も兼ねて一石二鳥、暫くはノイバラとクリで続けました。ノイバラの葉は、柔らかいし、ひょろっとした茎にぶら下がってわらわらするのが好きなようです。脱皮するのにも都合が良いようです。一方、クリは落葉樹なので紅葉します。与えた時は緑だった葉が、葉の縁や葉脈にそって徐々に黄色くなりそして全体が奇麗な茶色になります。このだんだんと紅葉するクリの葉が、育ち盛りのナナフシたちにとって格好の擬態道場となるようです。茶色い葉っぱにつかまって、ゆらゆら体を揺すりながら、ふん、ふんと踏ん張ると、緑の体が徐々に茶色くなっていきます(想像が入っています)。なかなかうまく化けられない子もいるようです。見ているとノイバラのほうではあいかわらず同じ緑色でわらわらする集団が、一方クリの周りには茶色い集団があって、緑色と茶色とそれぞれ上手い隠れ場所を探すようです。
 皆さんも、次にいらっしゃった時には、是非ナナフシ水槽も覗いてあげてください。




[村田英克]

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