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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【パソコンが研究道具のわたしたち】

坂東明日佳
 新しい研究室で毎日を過ごしているうちに、パソコンを研究道具として使う仕事に独特の違和感があることに気づきました。それはお互い何をしている最中なのかがわからない、ということです。これまで私が見てきた研究室では、パソコンだけでなく実験机で試薬を調整したり、温室に移動したり、その合間にパソコンでデータベースを調べたりと、互いに今何をしている段階なのかがなんとなく把握できる程度には少なくとも人が動き回っていました。一方で、今のようにそれぞれが一日中パソコンの前に座っている状況だと「実験に集中している最中かな?それとも気分転換にメール書きでもしているかな?」という具合に、パソコンの中で繰り広げられているはずのその人の行動やそのときに抱いている感情がさっぱり伝わってこないのです。そのことに怯んで自分も用件をパソコンを介して伝えてしまい、結局相手の意見やリアクションを得るタイミングを失ってしまうという悪循環をつくってしまった時もありました。
 ところが最近は、海外からのメンバーが増えた影響もあってか、状況が変わってきました。研究室全体に少しずつ日本語や英語、さらに専門用語や日常会話など多種多様な会話がキーボードを打つカチカチという音の合間から聞きこえてくるようになりました。そのおかげで、事実の伝達だけでなく、他のメンバーの意見や関心事も把握しやすくなったように思います。互いに何をしている最中なのか分からなくて話し掛けるのに躊躇しても、人の声や顔つきなどの動作を介して状況を確認しあうことが最終的には研究室全体にスムーズに情報を流すことにつながるはずです。私も意識して周囲に自分の状況が伝わりやすいリアクションをとることを心掛けよう!と思いました。


 [ 坂東明日佳 ]

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