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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【BRHとのご縁は活断層の仕事場から】

2017年8月1日

渡邊 喜美子

1990年代に大阪科学技術センターの一室で活断層の研究資料を扱う仕事をしていました。研究者の方々を中心に日々活断層研究資料を必要とする企業の方々とで構成されており、年々公開される情報を提供して頂き、それらのデータベースを作りながら年間にセミナー、フォーラム、現地見学会を実施していました。ある日、代表者宛にBRH開館のお知らせとともにパンフレットと地質専門の方を紹介して頂きたいというお手紙が届きました。パンフレットの内容と扇型の絵巻に一目ぼれした私はすぐに高槻を訪れて、ドミニカなどから集められた琥珀を見ながらジュラシックパークの世界を想像し、何度も家族とともに展示をたのしませて頂きました。BRHとのご縁の始まりです。その後大阪大学へ戻り、学内で講演をして下さった中村館長とお話させて頂く機会に恵まれ、BRHの展示案内をさせて頂けることになりました。

地震の多いこの頃、活断層が身近になりました。国内にも沢山の活断層の現場がありますが、1900年代にサンフランシスコ地震を3回も起こしたサンアンドレアス断層はカリフォルニア州南部から西部に続く1,300kmに及ぶ大きなもので、1972年には断層の両側15m以内には人が居住する建物の新築は禁止(グリーン地帯に)するという法律もできています。東京地学協会の主催でこの断層のロサンゼルスからサンフランシスコ湾岸地域に至る3,000Kmを車と徒歩で見てきました。印象的だったことの一部をお話しさせて頂きます。

行程の中でサンアンドレアス断層の真上に建つワイナリーがあり、少しずつ断層が動くクリープ運動によって建物内の厨房が右横ずれを起こしています。屋内には自然遺産に認証されたプレートが掲げられて、今も年12mmほどの速さで横ずれが続いています。美しく整備された街並みのホリスターにはじわじわと道路や家屋を変形させている現象があちこちでみられるのですが、行きかう人々がのどかに断層と共存されているのが印象的でした。最後に訪れたサンフランシスコ湾岸のポイントレイエスでは1906年の地震(M7.8)変動を観察するために整理された痕跡(トレイルとよばれています)があり、各地点に詳しい解説板が設けられています。大人用の説明板の横に子供向けの平易なかわいい小型の説明板が設けられていて、思わず見とれてしまいました。BRHへも幼い来館者が多くなりました。子供たちの多い時はまずナナフシ、肺魚など生きものたちから生命誌へ入ります。トランプや絵本も用意します。子供たちにたのしんでもらえるような展示が添えられたらいいですね。

[ 渡邊 喜美子 ]

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