1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 『生命誌の思い』ほか

研究館より

表現スタッフ日記

2020.06.15

『生命誌の思い』ほか

思いがけない「コロナ禍」で、一人一人は遠隔にありながら「共体験」を生む、インターネットを介した<場>の生成に期待が集まりました。同時にその「質」も問われています。"本願誤り給はずハ"、新たな「表現を通して生きものを考える」相互交流も可能ではないかと、この数ヶ月の間、考えてみれば、そもそもの実施計画の通り、同時に、随時「こんなことできるかな?」といった着想を柔軟に取り入れ試行錯誤しています。

まず文庫本『生命誌の思い – 100の対話−』。当初、発送を予定していた4月初旬は「コロナ禍」で物流を促す「発送」を見合わせました。けれどもこんな時こそ、お一人お一人に、じっくり読んでいただきたいという思いから4月下旬から発送を再開。生命誌のこれまで、そして、これからについてメッセージを寄せてくださった読者の方にお送りしています。いただいたコメントは順に「みんなの広場」で紹介していますが、「生命誌」という言葉に込められた「生きていること」の意味が、皆様方それぞれの人生の日々、奥行きに深く響いて、新しい言葉で返ってくるという「反響」現象が、当初予測を超えて、深く、様々に、広く、長く、続いており「涙」。まだまだ在庫ありますんでご応募ください。文庫本のコンセプトは「いつもポケットに生命誌」(九ちゃんの「えんぴつが一本」という歌がその源泉)です!

そして「生命誌かるた」。これも沢山のご応募に「涙」。皆様それぞれの「生命誌」が感じられます。実は応募がめっちゃ少なかった場合、右往左往しないようにと、自らも詠んでみました。いざ始めると止まらず「い ろ は に ほ へ と ち り ぬ る を わ か よ た れ そ つ ね な ら む う ゐ の お く や ま け ふ こ え て あ さ き ゆ め み し ゑ ひ も せ す ん 」という四十八文字に始まる五・七・五を一揃い、ほとんど先述の『生命誌の思い』編集の視点ですが、どうやら陽の目を見ることもなさそうなので、いくつかその解説とあわせてここに転記します。「生命誌アーカイブ」の記事もあわせてご覧ください(各項の数字は詠んだ順です)。

<七>  熱と水 コホネン・ネットで 脳と生る

テーマ「生る」の年のTALK「脳の自己形成から人間を探る」–– 人間の脳の形成は、球体の熱膨張、脳を満たす水分子の制御、更に、大脳皮質を二次元平面に無数に並ぶコラムに見立てることで説明できるとする大胆不敵な中田説を称えて。

<八>  トリアタマ 層じゃなくても 賢いぞ  

RESEARCH 「小鳥がさえずるとき脳内では何が起こっている?」–– 鳴鳥のさえずりという高度なコミュニケーション能力を支えるトリの脳は、バウムクーヘン状の層構造を持つヒトの大脳と違ってシワシワもないが、小さなツルツルな表面の領域ごとに機能分業し、歌を聞き、歌を鳴き立派に暮らしている。

<九>  死と性に はじまる古事記 生命誌

TALK「東北から明日の神話をつくる」 –– 「古事記」のイザナギ、イザナミも、生命38億年の中の多細胞生物も、その誕生は「生と死」の対でなく、「性(男・女)と死」の対が生じたことがミソであるというお話。

<十>  言葉の木 花咲き実る ヒトの脳

SPECIAL STORY 「人間の想像力を科学する」––「手塚治虫」の存在に匹敵するような形で、科学は文化として、今後も夢を語れるのだろうか? という問いに正面から挑む、酒井邦嘉先生のお仕事を、101号「人間の想像力を科学する」/64号「文法が生み出す人間らしさ」から五七五に言うなら…。チョムスキーの生成文法理論をfMRI観察により「文法中枢」として把握し、その先、言語中枢として機能する「言葉の木」の原理であるフラクタルな枝分かれ構造から、果たして、多文化・多言語の様相を呈する人類の共通項たる「ニンゲンゲンゴ」をどこまで実証できるのか。またそれを、絵画・音楽などの別を越えて「人間の創造力」の原理として把握することがホントウにできるのか。人間の想像力を科学するフロンティアにワクワクします。

<十二>  糠床に 手間を惜しまぬ 人の道

TALK「自然からいただく清らかなもの」 –– 四季の移り変わりの中で糠床を維持する「人知」と、それに応えて恵む自然の懐の深さをうたふ。

<十三>  ぬばたまの 「無」より生まるる 徒なる世

テーマ「生る」TALK「理論と観測が明かす宇宙生成」 –– 宇宙物理学は、宇宙創成や、その構成要素、さらに137億年の歴史的経緯を解き明かすべく進んでいるが、いくら「わかったこと」を積み上げても、現実が「無常」であることに変わりはない。

<十四>  ホ乳類 胎盤の恩 ウイルスか 

RESEARCH 「胎盤の多様化と古代ウイルス」 –– 胎盤の多様性は、有胎盤哺乳類の祖先と古代ウイルスの関わりから生まれた。 

ここでご紹介した文庫本『生命誌の思い』プレゼント「生命誌かるた」のご応募の締め切りは、6月30日です。皆様にとっての「生命誌」をお聞かせください。画像投稿「わたしの生命誌」もお待ちしています。