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研究館より

表現スタッフ日記

2021.05.14

生きものから生きものへと

 今年も梅か桜かと、見る間に開くもみじ葉の、日陰に響く夏の音連れ。と、ここまで七五調でがんばりました。いま春も盛りです。

 愚息の通う保育園では毎年4月に、ヒヨコ組(0歳)→カニ組(1歳)→メダカ組(2歳)→チョウチョ組(3歳)→トンボ組(4 歳)→テントウ組(5歳)と進級します。お兄ちゃんはトンボさんからテントウさんに、弟はカニさんからメダカさんに成りました。「カニ」と聞いてよく思い出すのは、宮沢賢治の『やまなし』の世界です。「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」という不思議なフレーズが印象に残ります。川底に暮らし水面の外の世界に想いを馳せるカニの子供の物語は、1歳さんの身体能力とその視点から徐々に世界の広がりを知っていく過程に重なるものがあるような気がします。カニからメダカになると、川底を離れ、スイスイと水環境を自由に泳ぎ回る。2歳さんは、それに喩えられる行動力を獲得するような気もします。保育園では皆で群行動もしているようです。そして3歳さんはチョウチョのようにひらひらと空中を自在に舞うように行動力がアップします。しかし、どことなくフワフワして頼りない。それがトンボのように、時に虚空でホバリングし、かと思えば、獲物を目がけて鋭角に素早く飛び回りと、複雑に制御の効いた行動を示すのが4歳さん。とそういう感じで保育園のクラス名が決められたのかしら? などと思いながら日々、送迎をしています。

 しかし、トンボさんからテントウさんへの展開が、いまひとつ腑に落ちません。アリとアブラムシの共生という文脈では、テントウムシは天敵です。ちょうど春の今時分、繁茂するカラスノエンドウなどにアブラムシが繁殖し、アブラムシを食するテントウムシもよく見られます。トコトコと草花をよじ登り、てっぺんで翅を広げて飛び立つ姿は、微笑ましくもあります。しかし、小学1年生への進学を目前に控えた保育園生活の最後の1年が、なぜテントウさんなのか? やはり今ひとつ納得が行きません。

 また1歳さんはカニ組ですが、0歳さんはヒヨコ組です。なぜ、0歳クラスだけ、昆虫でなく鳥類なのか(カニも甲殻類だが)。羊膜類という意味では、卵を産むトリも私たち哺乳類も仲間なわけで、赤ちゃんの「はじまりは卵から」というイメージで、かつ羊膜類の中でも、人間に、近すぎず遠すぎず、生活史的にも身近な生きものであるところの、ニワトリの卵から生まれたばかりの「ヒヨコ」が選択されたのかもしれない。などと思っています。

 5月15日の研究員レクチャーは、この4月から表現セクターのディレクターを兼任しておられる近藤寿人顧問のお話しです。
タイトルは 「いつもとは違う視点から、生きものとしてのヒトを眺めてみよう」 。“生物学的愛情”あふれるレクチャーです。オンライン開催ですので、ふるってご参加ください。