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研究館より

表現スタッフ日記

2022.06.01

視点を変える

昨年4月より1年間、研究セクターでの事務業務、その前は受付業務を担当し、この4月から館内案内ガイドの担当に戻りました。また新たな気持ちで臨みますのでよろしくお願いいたします。

この生命誌研究館は、会社としては小さな組織ですが、それでも違う部署に所属してみるとまた少し違う景色が見えることに気がつきました。視点を変えてみるということの重要性を改めて感じたこの2年間でしたので、今日は「視点」をキーワードにしてみたいと思います。

私は健康維持も兼ねて、カメラを持ってよく散歩をします。特に野鳥を探して撮影するのが好きなのですが、新緑の頃からは、生い茂った木の葉や草のために野鳥の姿がとても見えづらくなります。そこで、遠くの木の枝から、足元の草や花へ視点を移し、そこにいる小さな生きものを探してみることにしました。カメラのレンズで拡大すると、足元にも驚くような世界が広がっています。この虫の名前は何? とまっている植物の種類は何だろう? そこで何をしているの? この葉っぱについているものはもしかしたら虫こぶ? たくさんの「?」が湧いてきて立ち止まってしまい、散歩にならないほどです。

昨年夏より開催していた企画展「食草園が誘う 昆虫と植物のかけひきの妙」および、そのもととなっている季刊『生命誌』105~107号のリサーチ記事では、私にとっては撮影したり眺めたりするだけの身近にいる生きものについて、研究者が目に見えず繰り広げられている巧妙なかけひきを解き明かしてくださっています。新しいことを知ることでまた、今まで見えていなかったものが見え、さらに「?」が増え、逆に歩数計のカウントは減ってしまいそうです。

さて、お散歩がてら、あるいは所属されている団体の社会見学、様々なきっかけで生命誌研究館へお越しの皆さまは、どんなイメージをもってここへ来てくださるのでしょうか。案内ガイドでは、教科書に出てきたような言葉や数字を口にすることもありますが、勉強のために何か覚えて帰っていただきたいという意図は微塵もありません。ただ、生命誌研究館へ来てくださったことで、ちょっとだけ視点が変わり、例えば庭やベランダの植物にいる青虫を見つけたとき、コロナ対策でマスク着用・ソーシャルディスタンスと言われたとき・・・昨日までとは少し違ったことが思い浮かぶようになられていたら嬉しいなと思います。


散歩中に撮影した昆虫たち

室園純子 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター