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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2022.12.15

食べることを大事にすることと争わないこと

2022年も暮れようとしています。このコラムも今年最後ですので、一年を振り返ります。

生命誌を研究館活動の中で考えますと、生きているということそのものを生きもの全般で考えることが基本になります。クモ、チョウ、ハチ、プラナリア、ナナフシ、ハイギョなどが大事なことを教えてくれます。けれどもそこから少し自由になってからは、さまざまな分野でさまざまな活動をしている人々から「生命誌絵巻」を見て「人間が生きものであることを実感した」と言われることが多くなり、「生命誌の中での人間」について考えることの大切さを思うようになりました。

「生命誌絵巻の中にいる21世紀の人間」として考えたいのが
① 生きることの基本にある食べることについて、食料生産の方法から日常の食まで、これぞというやり方があるのではないか(土の大切さなど)。そこから新しい生き方が見えてくるのではないか。
② 戦争のない生き方ができないと多くの人が思い込んでいるのはなぜなのだろう。とてもバカバカしいことなのに。これまで戦争が絶えなかったからと言って戦争のない社会などあり得ないとは言えない。
という二つです。
「ありふれた大型哺乳類」(J・ダイヤモンドの言葉)であるヒトが直立二足歩行をきっかけに独特の進化をし、認知革命を体験し、文明を発展させた歴史が、近年さまざまな分野の研究から描き出されています。それを追っていくと、共感や想像力などの問題をていねいに考えなければならないことが見えてきます。自然の力を巧みに生かすことで、お金ではない本当の豊かさを手にしよう。権力を振り回し武力で戦うのが人間の本性なのだろうかと問い、多様な存在を認めて大きな争いごとのない暮らし方を探ろう。そんな思いが生まれます。せっかく生命誌を考えてきたのに、どう見ても賢い生き方とは思えない社会で暮らすのは落ち着きません。

来年もこんなことを考え、小さなことを積み重ねていこうと思います。皆が生き生き暮らす社会を願って。御一緒によろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えくださいませ。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶