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研究館より

表現スタッフ日記

2023.09.15

生き続けるすごさ

生き物の命は儚く、個体ひとつひとつの寿命には限りがありますが、地球上の生き物全体の命としては決して途切れることなく、最初の生命体が誕生した瞬間から非常に長い年月が脈々と続いています。ここ生命誌研究館では、生き物の持つ様々な時間をテーマに、企画展が催されています。

ここで唐突ですが私の話をしようと思います。日本人である私は、流れゆく時間がそのまま時刻として刻まれる環境で、今まで当たり前のように生活してきました。そのことを疑問にすら思っていませんでしたが、その考えが少し変わった出来事がありました。主人の仕事の関係で以前フランスに駐在した時に、夏時間と冬時間というものに出くわしたのです。フランスでは、深夜の12時になると一斉に家中の時計を1時間ずらす日があります。時間は変わらずに流れているのですが、人間が定めたやり方で年に2回『時刻がワープしたり巻き戻ったりする』のです。初めは戸惑いましたが、慣れてくるとその方が暮らしやすいことに気づきました。

私はガイドのご案内でしばしば「環境に適応できた生き物のみが生存しています」とサラリとお伝えしていますが、本来は環境に適応するどころか、固定概念1つを取っても、何かを変えるということは容易ではありません。しかし私は「時刻のワープが必要な国もある」と知ることができて少し視野が広がり、概念や価値観の多様性に気づくことができました。

皆さまの感じる「生き物の時間」や「多様性」についても、お伺いできる機会があれば嬉しいです。

藤原正子 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター