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研究館より

表現スタッフ日記

2023.11.01

植物博士への憧れ

今年の4月から9月末まで、NHK朝ドラで「日本の植物学の父」と称される牧野富太郎の生涯をドラマ化した『らんまん』が放送されていました。毎朝ドラマを見る習慣はなかった私も、「見逃し配信」という便利なサービスにも助けられ、最終回まで見続けました。最初は牧野富太郎の物語ということで興味をもって見始めたのですが、主人公だけでなく、まわりの登場人物がとても丁寧に描かれており、毎回心のなかに小さな花が咲いたような気持ちにさせられる素敵なドラマでした。

このドラマで植物への興味が深まった方もいらっしゃるかもしれませんが、私も以前から「植物にくわしい人」への憧れを抱いています。少し前に、生命誌研究館展示ホール奥の掲示板(主に他施設のイベントポスターなどが貼ってあります)に、「生物分類技能検定」という検定試験のお知らせがあることに気づきました。これを見て、以前来館してくださった方からいただいた名刺に、この検定資格が記載されていたのを思い出し、検定を受けるために勉強をしたら少しは植物にもくわしくなれるかも?と思い、まずは3級を受けてみることにしました。

ちなみに私は、生きもの全般に興味はありますが、特に強い興味の対象はふたつのチョウ(蝶と野鳥)です。検定試験の過去問を解いてみると、例えば「チョウと食草の関係で正しいものを次から選びなさい」はもちろん、「成虫で越冬するチョウをひとつ選びなさい」「日本での冬鳥を選びなさい」というような問題はすぐわかるのですが、やはり植物や水中の生きものの問題ですと、聞いたこともない名前が出てきたりします。でも、これらはきっと他の誰かには瞬時に答えられる問題に違いありません。図鑑をたくさん買って知らないものを調べたりしますが、もう錆びついた頭にはなかなか思うように入ってくれません。

そんな折に館内をご案内させていただいた方が、「リュウゼツラン(竜舌蘭)、キジカクシ科」という花が咲くまで40年かかる植物が花を咲かせたところを見た、とおっしゃってスマホの写真を見せてくださいました。また、恐竜好きのお子さまには、草食恐竜でも小さいうちは肉を食べるものがいるんだよ、そのほうが早く大きくなれるから、と教えてもらいました。こうして得た知識は忘れにくく、ガイドをしながらたくさんの先生にいろいろなことを教えていただいているようでとても学びがあります。

自然には不思議や驚きが満ちていて、身近にもあるそのひとつひとつが生命誌の一員です。全国の植物愛好家からたくさんの植物標本が届いたという牧野博士を真似るわけではありませんが、展示ガイドにご参加の際には、ぜひ皆さまご自身の発見や体験をもち寄って、その不思議や驚きを共有していただけたらうれしいです。
 

室園純子 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター