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研究館より

表現スタッフ日記

2025.05.01

皆様、はじめまして。

2025年4月より、新設された黒田ラボ(形態発生研究室)のメンバーとして生命誌研究館に加わりました、日野太夢と申します。ラボの立ち上げから運営に携われることを大変光栄に思い、充実した日々を過ごしております。これまで所属していた阪大の研究室の閉室と引っ越しを並行して進めていたこともあり、ようやく落ち着きを取り戻した今、本格的に研究に取り組むことが待ち遠しい気持ちでいっぱいです。

私が研究者を志した原点は、身近な生き物への好奇心から始まりました。幼少期の虫捕りをきっかけに、「なぜこの生き物はこのように動くのか」「どうしてこの形なのか」といった疑問を抱くようになり、その探究心が現在の「生き物の形づくり」の研究へとつながっています。

生物の形づくりは驚異的です。例えばヒトの体は、数十兆もの小さな細胞が、それぞれ全体像を直接見渡すことなく緻密に連携しながら形成されています。もし人間が一つの細胞になってこのプロセスを担うとしたら、どれほど難しいことでしょう。百人規模で単純な形を作ることは可能かもしれませんが、万単位となればもはや不可能に近いでしょう。しかし、自然は進化の過程で巧妙に体づくりを制御する仕組みを生み出し、多様な形の生命を創り上げてきました。この精緻なメカニズムを解明し、生物がどのように自らを形づくるのかを理解したいという思いこそが、私の研究を続ける原動力です。

黒田ラボでは、魚の骨、特に尾鰭の骨に焦点を当て、細胞がどのように骨を始めとする細胞外基質(ECM)を正確に制御し、器官を形成するのかを研究しています。魚のヒレでは、下の写真のようにアクチノトリキアと呼ばれる針状のコラーゲン構造がヒレ骨の先端に扇状に配置されており、この構造がヒレ骨の伸長を支え、美しい放射状の形態を形成するのに不可欠であることが分かっています。しかし、このアクチノトリキアの形成や配置がどのように制御されるのか、またそれを利用してヒレ骨の形成がどのように調節されるのかについては、まだ多くの謎が残されています。

生物の体作りには、進化の過程で生まれたさまざまな興味深い機構があり、その多くは未解明のままです。私はこの研究を通じて、その一端を解き明かし、生物の体作りの精妙な仕組みの魅力を皆様に伝えていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
 

日野太夢 (奨励研究員)

形態発生研究室