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研究館より

ラボ日記

2020.02.03

海外の研究材料

生物の研究では度々海外のサンプルを必要とします。それは生物の分布域に国境がないからです。人間によって作られた国境というものは、多くの側面において生物研究の妨げになっています。特に近年海外のサンプルの使用はどんどん厳しくなり、研究の企画から実行まで、様々な許可を取得するために長い時間と労力を費やす必要があり、研究を始める前にすでに疲れてしまいます。

昔、海外のサンプルは、その国の保護種やワシントン条約に引っかかるものでなければ、比較的に自由に採集ができていました。しかし、現在では、正確に言うと、「名古屋協定書:遺伝資源に関する国際条約」ができてからどんな普通種でも、その国の許可が必要になりました。

特に問題なのは「名古屋協定書」以前に海外で正式な許可を取らずに採集し日本に持って帰ってきたサンプルの取扱です。我々はまさにその問題に直面しているところです。知り合いの研究者から昔海外で採集してきたサンプルを頂き研究に使いました。論文を作成したところ、そのサンプルは正式な許可なしで採集したものであることが分かり、そのデータは発表できなくなりました。様々な関係機関に問い合わせてみましたが、結局、再度一からやり直すのが最も確実で早い解決法であることが分かりました。まず相手国の研究者パートナーを探し、共同研究プロジェクトを立ち上げ、それから、相手国の研究者を通して政府機関から様々な許可書を取得し、最後に研究ビザを申請して、ようやく海外へサンプル採集に行けるようになりました。これら一連の過程をこなすには、結局約一年間を費やしました。

実はこのようなケースは日本国内で多く存在しており、昔海外で採集して日本に持って帰ってきたサンプルについて、今後どのように取り扱うのかは多くの研究者が抱えている切実な問題であり、国と国の政府機関の間で何か良い解決法を考えてくれることを期待しています。

蘇 智慧 (室長)

所属: 系統進化研究室

カイコの休眠機構の研究で学位を取得しましたが、オサムシの魅力に惹かれ、進化の道へと進みました。1994年から現在に至るまで、ずっとJT生命誌研究館で研究生活を送ってきました。オサムシの系統と進化の研究から出発し、昆虫類をはじめとする節足動物の系統進化、イチジク属植物を始めとする生物の相互作用と種分化機構の研究を行っています。