1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 種としての存在を感じて

研究館より

ラボ日記

2020.05.15

種としての存在を感じて

2月15日(土)のオープンラボのとき、不安を感じていた。「3密」という言葉がまだ出されていないとき。「密接」がないようにプログラムを工夫し、細心の注意を払って、イベントを行った。私たちスタッフはもちろんマスクを着けての対応であったが、多くの参加者もマスクを着けて熱心に参加してくださった。それから、そのとき私が想像した未来よりも、ずっと深刻な事態が急展開してきた。それも全世界規模で。ウイルスによる感染症がこれほどまでに脅威になるとは想像できていなかった。

地震や台風、大雨などの天災は地球上の比較的局所に影響を及ぼし、どんな生きものもその影響下に置かれる。それに対して、今回の新型コロナウイルスの感染拡大はヒトという種に特異的であり(一部に、他の動物への感染が指摘されているが)、地域を選ばない。自分がヒトという種の一員であることを感じずにはいられない。

今回の新型コロナウイルスがなぜ、ヒトをターゲットとするのか。ウイルス表面の蛋白質の構造が、変化を繰り返す中で、ヒトの細胞表面の受容体蛋白質の構造とたまたま適合し、ヒト細胞への感染力獲得につながったと見られる。つまり、偶然の産物である。

偶然の出来事が特定の種に対して存続の危機をもたらすということは、生物が進化してきた長い歴史の中で度々あったであろう。在宅での研究活動が続く中で、少し大げさではあるが、生物進化の一場面に居合わせているような感覚を感じている。

動物多様化の背景にある細胞システムの進化に興味を持っています。1) 形態形成に重要な役割を果たす細胞間接着構造(アドヘレンスジャンクション)に関わる進化の研究と、2) クモ胚をモデルとした調節的発生メカニズムの研究を行っています。