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研究館より

ラボ日記

2020.10.15

オンライン進化学会でオサムシの研究を発表しました

新型コロナウイルスが我々の社会にこれほど大きな影響をもたらしてくると予想していた方はいたのでしょうか。ウイズコロナの時代のなかで、どんどん進化している社会を実感しています。大学の講義、会議、大会などは、いまやほとんどオンライン上で行うことになりました。今年の日本進化学会の年大会も、先月4日間の日程でオンライン開催されました。初めての試みで、主催者も参加者も不安の気持ちを持ちながら大会に臨んでいましたが、終わってみれば、大きなトラブルもなく、大会のプログラムもおおむねスムーズに進行することができました。これまでの対面開催よりもじっくりと発表を聴いたり、ポスターを見たりすることができたと思います。また、質問については時間の制限がなく思いついたときにすぐ書いて質問できたのも、オンライン開催ならではの特徴であり、個人的には非常に良かったと思っています。このようなオンライン開催形式はこれから市民権が得られ、ポストコロナ時代になっても恐らく残るのでしょう。

ところで、今回の学会では、我々が最近進めているオサムシの後翅の退化の進化的分子機構の解明に関する研究成果を発表しました。この研究の背景に関してはラボのホームページや以前のラボ日記(2017年と2018年)を見ていただきたいと思います。これまでの研究では、オサムシの後翅は分類群によって異なる形態に退化していることが判明し、それぞれの分類群で独立に退化したことを示唆しました。しかし、これまで見てきた後翅はあくまでも成虫になった時点のものであり、発生の最終段階の形です。その後翅はどのような過程を経て作られたのか、つまり、後翅の退化が発生過程のどの時点で生じたのか、これについては全く不明でした。昨年後半から今年にかけて、オサムシ愛好者の方々のご協力を頂きながら、試行錯誤を重ね、後翅が針状に退化したヤコンオサムシと完全な後翅をもち飛翔できるクロカタビロオサムシの飼育に成功しました。そこで、前蛹(蛹になる前、摂食せず動かない状態の幼虫)の翅原基から羽化するまでの後翅の全発生過程を初めて観察することができ、後翅退化の過程が明らかになりました。また、各発生ステージの翅の遺伝子発現の解析を進めたところ、興味深い知見も得られました。学会で発表したことを含め、これらの研究の進行状況の詳細については、11月21日の研究員レクチャーでお話させていただきます。もしご興味がありましたらぜひご来聴ください。

蘇 智慧 (室長)

所属: 系統進化研究室

カイコの休眠機構の研究で学位を取得しましたが、オサムシの魅力に惹かれ、進化の道へと進みました。1994年から現在に至るまで、ずっとJT生命誌研究館で研究生活を送ってきました。オサムシの系統と進化の研究から出発し、昆虫類をはじめとする節足動物の系統進化、イチジク属植物を始めとする生物の相互作用と種分化機構の研究を行っています。