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研究館より

ラボ日記

2021.02.15

均一であることの有用性と怖さ

2月に入ってから、観察用に飼育していたプラナリアが一斉に死んでしまうという事件が発生しました。実験用のプラナリアは別に飼育しているため研究自体に影響はないのですが、普段通りに飼育していた中で急にプラナリアが死んでしまったことで研究室内には動揺が走りました。

 

プラナリアに限らず、実験に使われる多くの生物は近親交配を重ねて殖やしたものや、一匹から無性生殖によって殖やしたものになっています。これによって、ゲノムがほとんど同一である均一な生物集団とし、個体間での差を無くしているのです。遺伝情報が同一である均一な生物集団は、実験の再現性を取るうえでは非常に有用です。しかし、均一であるがゆえに環境が変化してしまうと集団内の全ての生物が一斉に死んでしまうことも起きてしまいます。実験動物は実験するうえでは非常に有用ですが、飼育をするうえでは非常に繊細であると言えます。今回の一件で、実験の合間に普段何気なく飼育しているプラナリアでも、より一層気を引き締めて世話をしていこうと反省させられました。一方で、均一な集団であることの怖さ・脆さを再認識する機会にもなりました。

 

現代社会においても「多様性を尊重する」とは言葉でいうものの、なぜ多様性が必要なのかきちんと考えることは少ないように思います。それぞれの性格・生き方を尊重するという意味があるのは当然のことですが、均一で偏った集団になり変化が起きた時に対応できないという事態を避けるためにも、多様性を尊重することは大切なのだと改めて気づかされました。

佐藤勇輝 (奨励研究員)

所属: 形態形成研究室

プラナリアを用いた成体多能性幹細胞の研究をしています。