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研究館より

ラボ日記

2022.07.15

宇宙の起源、太陽系の起源、生命の起源

はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った物質(粒子)の最初の解析結果が先月サイエンス誌(https://www.jaxa.jp/press/2022/06/20220610-2_j.html)と日本学士院紀要(https://www.jaxa.jp/press/2022/06/20220610-1_j.html)に発表された。試料と向き合う研究者の興奮が想像に難くない。好奇心と挑戦心によって駆動される学術研究プロジェクトが、研究プランを国内外から募り、ますます多くの研究者を巻き込んで発展する様には、自然科学の分野で研究活動するひとりとして見習うべきものを見る。

発表した論文、プレスリリース、メディアの報道、どこを見ても、「何の役に立つ」などとのお決まりの文句は書かれていない。宇宙の歴史、太陽系や地球の成り立ち、生命の起源に対する好奇心に応える成果であることが共通のメッセージである。今回の発表では、リュウグウ粒子に太陽系の原始的特徴が保持されていたことに加えて、アミノ酸などの多くの有機物質が検出されたことで、生命の重要な構成要素が地球外からもたらされた可能性が高まったとの見解が示されている。我々がどこからきたのか、物理でみる時間のスケールと生物から見る時間のスケールでは大きな違いがあるが、生物学が物理学の一部であることを改めて気づかせられる。

原始的状態の根拠が気になって論文を少し読んでみたが、リュウグウ粒子に太陽系形成後約260万年より後に100度以上に熱せられたことがなかったらしいことが述べられていた。私たちのクモ胚や接着分子の研究ではゲノムの変異に由来する分子システムや分子構造の変化を元に原始的状態を評価しているが、宇宙物理学では化学反応によって引き起こされる物質の変化を元に原始的状態を評価しており、太陽系形成直後にリュウグウの元となった天体が形成されてから物質が大きな変化を受けることなく現在に至っているらしい。時間の経過に耐性のあるものを見出して原始状態を理解しようとする努力は分野を超えて共通である。

はやぶさ2の成果が先月報告されたと思ったら、昨日、アメリカで「ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡」の運用開始イベントがあった(https://www.youtube.com/watch?v=ySaIPoHisRg)。この望遠鏡で捉えた初めての画像がお披露目された。これまでのハッブル望遠鏡の100倍のパワーを誇り、130億年前の宇宙初期の姿を捉えることができるという。生物学で言えば、化石が見えるのと同じか、それとも、ゲノムの情報を元に過去に遡るのと同じか。とてつもない時間を感じることにおいて、宇宙物理学も生物進化学も違いはない。

イベントでハリス副大統領が、
”It will enhance what we know about the origins of our universe, our solar system and possibly life itself."
と述べた。巨額プロジェクトに批判はつきものであろうが、新たな知を求める挑戦が広く可視化されることの人々へ与える影響がどれほどのものなのか、測れるものなら測ってみたい。

動物多様化の背景にある細胞システムの進化に興味を持っています。1) 形態形成に重要な役割を果たす細胞間接着構造(アドヘレンスジャンクション)に関わる進化の研究と、2) クモ胚をモデルとした調節的発生メカニズムの研究を行っています。