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研究館より

ラボ日記

2022.11.15

日仏発生生物学会に参加して

11/7-10にフランスのストラスブールで開催された日仏合同の発生生物学会に参加しました。飛行機に預けた荷物が届かない……という状況から始まった出張でしたが、多くの研究者とコロナ禍を経て再会、海外の研究者と交流、そして無事に発表し、充実した気持ちで帰国しました。(ちなみに、荷物は2日後にホテルに届きました。)

学会では80程度のポスター発表と50程度の口頭発表、ポスターのフラッシュトークがありました。口頭での発表がひとつの部屋で行われたため、すべての発表を聞くことができ、また全員に発表を聞いていただくことができ、非常に嬉しく思いました。発表を聞いていろいろ感じることがあったのですが、その中で2つ挙げてみます。1つは、力(Force)への関心がますます高まっていること、もう1つは、新しい技術がもたらす変化についてで、これらに関して考えを巡らせました。前者の力は、形態形成時の組織の変形の力のことです。力がさらなる変形や遺伝子発現にどのようにはたらくかという問題は、古典的な遺伝学や分子生物学だけでは解くことが難しいのですが、数理解析と実験の組み合わせや、細胞の観察技術を駆使するなど、様々な角度からの研究の発表がありました。私たちのクモの研究も形態形成(力)とパターン形成(遺伝子発現)が結びつくとますますおもしろくなると思っています。また、後者の新しい技術に関しては、もちろん技術そのものも興味深いのですが、オルガノイドやシングルセルなどの技術により、生命現象を分析することから再現することへと、これまでとは研究の矢印の向きが変わったように感じました。この変化がさらに生物学をどう変えていくのか、またその変化の中でどう研究を進めていくのか、考えるべきことが多くなりそうです。

私自身は、と言いますと、コロナ以降の初めての学会。あまりに久しぶりすぎて、もともと得意でない英語が簡単な文章でさえ咄嗟に出ず、トレーニングしておけば良かったと後悔。また任されていたセッションの時間を大伸びさせてしまったことも反省。議論が盛り上がっていたので、打ち切るのも忍びなかったというのは言い訳ですが。発表は、オオヒメグモのシングルセル解析について、最近出た論文の内容と、赤岩さんと一緒に進めている今まさに出ようとしているデータを口頭発表で紹介しました。学会の様子やほとんどの参加者がクモの話を聞いたこともないという状況を考えて、学会が始まってからも夜ホテルに戻った後にイントロや終わり方に手を入れて、悩みながら準備しました。未熟な部分も多かったとは思うのですが、幾人かの方におもしろいと言っていただき、とりあえずホッとしています。私たちのデータから本当におもしろいことを引き出せるように、解析を深めたいと思います。

写真は会場となった建物です。

動物の初期発生に興味を持ち、オオヒメグモを用いて研究しています。