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研究館より

ラボ日記

2023.10.17

30周年公開シンポジウムを終えて

10月1日(日)にJT生命誌研究館創立30周年の公開シンポジウム「ゲノムが紡ぐ生きものの個性と関係性 — 分子-細胞から種-生態系に広がる世界 —」を開催しました。多くの方にご来場いただき、また、YouTubeでご視聴いただきました。講演者の方には趣旨をご理解いただき、それぞれの切り口から、生命の仕組みの本質に深く踏み込んだ、少し難しいけれど、聞いていてワクワクするお話をしていただきました。加えて、今回特別に「壇上談話会」なるセッションを作らせていただきました。そのためにステージもレンタルして準備しました。講演者の方がどんなことにワクワクして研究しているのか、どんな未来を思い描いて研究しているのか、など普段お聞きできないようなお話をお聞きすることができました。ご講演の研究はどれも、世界の最先端をいく、基礎の基礎の研究です。研究者を知ることで基礎研究が身近になり、その研究者の熱意を感じることでその基礎研究が切り開く世界の大きさが伝わると嬉しいです。まだ少し先になるかと思いますが、今回のシンポジウムの報告は別の形で準備しております。ご参加いただけなかった方も是非そちらをご覧ください。

付け加えて、シンポジウムのテーマについて少し。企画を考え始めたのは昨年の今頃です。最初に考えたのは、生命誌とはなにか、生命誌らしさとは何か、でした。創立時の30年前のこと、この30年間に生命科学研究が劇的に展開してきたこと、生命誌研究館の研究の未来のことなどなど、いろいろと思いを巡らして、企画の趣旨を文章にまとめようと思ったのですがなかなかうまく行かず。挙句に思いついたのが、詩を書くことでした。国語が苦手で嫌いだった自分が詩を書くとは、長年「生命誌」に身を置いた人間の証なのかもしれません。科学研究の営みには多くのそれぞれの研究者の独自の感性や想像力が大きな役割を持っていて、きっちりとした文章で書いてしまうと生命誌がそこを侵してしまうような気がしました。というわけで、シンポジウムの企画の趣旨は詩を通して自由に理解していただけると嬉しいです。


   生命誌30年、はじまりは遺伝子の構造とはたらきが垣間見えてきた頃。
   今、ゲノムの情報を得ようと思えば得られる時代、どんな生物種であっても。
   色々な生きもののゲノムが読まれれば読まれるほど、生きものがそれぞれ違うのだ、と知らされる。

   ゲノムに基づいた発展で、違いを挙げ連ねることは簡単になった。
   しかし、違いを理解することは難しい。
   「違い」は個性を生み、関係性を育む。
   数学、物理学、化学、工学など、あらゆる学問を総動員して、「違い」を深く理解したいと思う。
   その先に、生きものの本当の面白さが見えてくる。


  「企画趣旨」(2023/10/1開催シンポジウム告知ページより抜粋)
 

動物多様化の背景にある細胞システムの進化に興味を持っています。1) 形態形成に重要な役割を果たす細胞間接着構造(アドヘレンスジャンクション)に関わる進化の研究と、2) クモ胚をモデルとした調節的発生メカニズムの研究を行っています。