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研究館より

ラボ日記

2024.02.01

タンパク質研究にハマってます

これまでDNAやRNAを使って遺伝子の構造や機能を研究することが多かったのですが、この2、3年は、培養細胞に遺伝子導入してタンパク質を産生させ、そこからタンパク質を精製することでそのタンパク質の構造と機能の関係を調べています。ここでの「タンパク質」とは、動物において細胞と細胞をつなげる(接着する)活性をもつカドヘリンと呼ばれるタンパク質のことです。

なぜカドヘリンかというと、カドヘリンの細胞膜から細胞の外に出ている部分の長さが、動物進化の過程で非常に長い状態から段階的に短くなってきたことが考えられています。つまり、カドヘリン分子にとっては長い状態が祖先の状態で、短い状態がより進化した、派生的な状態ということです。面白いのは、脊椎動物と昆虫では独立に生じた、異なる派生的状態が存在しており、カドヘリンの接着の仕組みや機能面で違いがあれば、脊椎動物と昆虫の違いや、脊椎動物と無脊椎動物の違いを細胞の観点から理解することにつながるのではないかと考えています。

カドヘリンタンパク質の働きは動物のからだの形作りに貢献しますが、そのカドヘリンタンパク質自体にも形(構造)が存在しており、その形はそのタンパク質が機能する仕組みと密接に関わっているはずです。動物進化によって生じたカドヘリンタンパク質の形の違いを知り、仕組みの違いを知って、動物のからだの形作りとの関係を理解したい、というのが私たちの研究目的です。もしかしたら、カドヘリンの形の進化が動物の進化において何か重要な役割を果たしたかもしれない、と妄想を抱いています。そういう妄想が日々の研究活動をドライブしているわけです。

私自身経験の少なさからタンパク質を扱う仕事には難しさを感じており、その領域に大きく踏み込むことをしてきませんでした。しかし最近になって、いよいよやらないと私の仕事が完結しないという思いに駆られ、今は全開状態で実験に取り組んでいます。いざ始めると、学び甲斐のあるいろいろな技術や知識があることを知って、楽しんでいます。なかでも、クロスリンク質量分析という技術はすごいです! 理研が提供する受託試験制度を利用させていただいたのですが、この技術を使うとごく微量のサンプルから、水溶液中のタンパク質において分子内、分子間で近接している部位を特定することができるのです。それと、3年前に発表されたAlphaFold2と呼ばれる機械学習に基づくタンパク質構造予測技術も革新的ですごいです。自分の研究としては、予測して得た構造モデルが3Dプリンターで造形でき、実際に分子の世界を手元で再構成する試みができるようになったのがすごいなあと思います。

これまであまりタンパク質を解析する技術について学ぶ機会を持たなかったのですが、これからいろいろとチャレンジしていきたいと思います。具体的な成果を発表できるのはまだ先になると思いますが、「気軽に研究室訪問」などの機会を利用して研究室にお越しいただければ進捗をお話しできるかと思います。

動物多様化の背景にある細胞システムの進化に興味を持っています。1) 形態形成に重要な役割を果たす細胞間接着構造(アドヘレンスジャンクション)に関わる進化の研究と、2) クモ胚をモデルとした調節的発生メカニズムの研究を行っています。