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研究館より

ラボ日記

2025.07.01

ダイバーシティについて

国際発生生物学会に参加する機会をいただき、プエルトリコまで行って来ました。カリブ海!素敵なところなのではないか、との期待感もありましたが、時差ボケと冷房による寒さにすっかりやられてしまい、会場のホテルの窓から遠くに見える海を横目に、半病人のような状態での参加となってしまいました。観光どころではなかったです。

学会で考えさせられたのはダイバーシティについてです。まず、研究テーマに関して、欧米の学会に参加するとヒトへの方向性を強く感じさせられることが多いのですが、今回は、講演のプログラムから発表内容のダイバーシティに気を遣っている様子が感じられました。タコやイカ、アホロートル、プラナリアと似ているけれどまた違った再生力の強い生物(名前不明)のような少し変わった生き物の発表もありました。私のオオヒメグモの発表もこちらの部類になるのでしょう。ただ、そうは言っても、日本の中も含め、理解されていないと感じることは多々あります。ヒトに向かっていない研究の本当の意味を伝えるにはどうしたら良いのか、考え続けなくてはいけないと思いました。

さらにダイバーシティに関して、発表者に対してもそれは徹底されていたように感じました。発表者のジェンダー、人種、現在活動している国などは本当に様々で、おそらくこれは偶然ではなかったのではないでしょうか。もともと欧米ではこのようなことに対する感受性が日本よりも高いのだと思いますし、最近の世界情勢やアメリカでの政策から、さらに敏感になっているのかも知れません。学問の自由やダイバーシティはサイエンスや社会の発展のために大切なことだという研究者側の再確認だったのかも知れません。

学会では、アメリカで研究している研究者が、自分の研究内容の発表とともに、トランプ政権のサイエンスに対する政策への危機感を口にし、そしてそれに対する科学者の団結を呼びかける様子を幾度か目にしました。我々がさせてもらって来たように、若い人にも思い切り研究をさせてあげたい、そんな声もありました。日本でも、少なくともトランプ政権がアメリカの大学から留学生を排除しようとする動きについての報道は、それなりになされています。多くの人が批判しているように、これが馬鹿げた政策であることは明白です。ただ、その前にまず理解しておかなくてはいけないことは、アメリカがこれまで世界中の国々から留学生を受け入れて来たという事実です。ポスドクに関しても、日本から研究費やお給料を持って行かなくても、自由に研究させてもらって来た人たちをたくさん知っています。本来は懐の深い国だったのです。だからこれからは仕方ない、ということを言いたいのではなく、憂えているのは日本に対してで、日本ではそのような文化が花開くことなく、トランプ政権と同じベクトルを向こうとしていることに危機感を覚えます。大学院生への援助に関して、留学生と日本人学生を区別しようとするなど、何故そんなことを考えられるのでしょうか。

動物の初期発生に興味を持ち、オオヒメグモを用いて研究しています。