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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【挨拶って難しいな】

中 秀司

 皆様はじめまして。奨励研究員として4月からラボラトリーセクターに加わりました中と申します。3月までつくば(科学万博があった、あのつくば市です)の研究所に在籍しておりました。研究活動が忙しいのですが、暇を見つけては初めて住む高槻の街を楽しんでいる最中です。

  さて、BRHでは館員に挨拶を奨励しており、「おはようございます」「こんにちは」など、館で出会う全ての人に声をかけるようにしています。挨拶は館員同士のコミュニケーションの基本なので、皆が挨拶できる職場はとても良いものだと思っています。
  無論、ラボの中でも日常の挨拶は欠かせないものですが、日常挨拶の中には間違った使い方が定着しているものもあります。その日の仕事を終えて帰宅する上 司や同僚に「お疲れ様でした」と声をかける、こんな風景が日本中で見られますが、この「お疲れ様」という挨拶は、本来ならば目上の者のみが使うのを許され た言葉なのだそうです。

  つい先日、ある事実が発覚しました。
  私達の研究室の非常勤顧問をされている吉川 寛先生 *1 が帰宅される際に、一同で「お疲れ様でした」と声をかけたところ、吉川顧問から「私は『お疲れ様でした』という挨拶がとても嫌いでね…」という話を聞いてしまったのです。
  一同「それはまずい」ということで、「お疲れ様でした」に変わる新しい挨拶を考えることになりました。とはいえ、日頃の挨拶は体に染みついてしまってい るため、なかなか代替案を思いつくものではありません。「普通に『さようなら』でいいんちゃうか?」「いや、それはあまりに失礼じゃねーの?」などと議論 になるも、ちっとも話はまとまりません。
  そこで尾崎研究員 *2 が一言......。

「『へば!』にしましょう」

  一同、

「はぁ?」
「えっ?」
「何ですか、それ…」

  尾崎研究員曰く、『へば』とは津軽弁で「さようなら」とも「お疲れ様です」とも取れるような帰りの挨拶なのだそうです。思わず私は、『へば』を敬語にするとどうなるのですか?と聞き返したのですが、津軽弁には敬語や尊敬語など存在しないからこれでいいのだそうです。
  かくして、研究室では帰りの挨拶に『へば!』が採用される運びとなり、尾崎研究員と学生の宇戸口さん *3 を中心に、突発的に『へば!』という挨拶が交わされるようになったのでした。もっとも、肝心の吉川顧問には、未だに全く話が通じていないようですが......。

  話は逸れますが、私が入館するのと入れ替わりで、昨年から当ラボで研究活動を進めていた留学生のYann *4 がフランスへ帰国してしまいます。私とは重複する期間が短く、あまり多くの話ができなかったのが残念です。
  Yannは無口な青年でしたが、朝夕の挨拶は欠かしませんでした。朝来るときには日本語で「おはようございます」、帰るときには「お先に失礼します」「お疲れ様でした」と言うのですが、本当に意味を分かってるのだろうかと、たまに不安になります。

  Yann、一年間お疲れ様でした。

  ちなみに、このラボ日記を書いているのは6月12日の午後なのですが、今日は夕方からYannの送別会です。研究をほったらかして、皆でしゃぶしゃぶ食べ放題に行ってきます。

  それでは皆様、『へば!』

*1*2 : 研究室紹介 をご参照下さい。
*3 : 当ラボ期待の新人。後日のラボ日記をお楽しみに!!
*4 : Institut national agronomique Paris Grignonからインターンシップで1年間在籍




[昆虫と植物の共進化ラボ 中 秀司]

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