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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【今年のノーベル賞】

小田広樹
 今年も例年のようにノーベル賞受賞者の発表がありました。最近はRNA干渉(’06)やマウスの遺伝子破壊技術(’07)など、発生や細胞の研究者にとって身近な研究が受賞してきましたが、今年も身近な研究が受賞しました。テレビや新聞の報道が活発だったのでご存知の方も多いかと思いますが、その研究とはクラゲの蛍光蛋白質(GFP)の発見とその開発に関するものでした。3人の受賞者のうちの一人、下村脩博士については報道で初めて知りました。GFPの最初の発見者が日本人であることはかろうじて知っていたのですが、今から46年も前にアメリカで行われた仕事だったとは全く知りませんでした。この10年間、私自身GFPには大変お世話になってきたのに本当に失礼な話です。
 それでも、科学とはそんなものかもしれません。下村博士もNHKテレビの中継で、「子供が育つみたいに、GFPが育った」という内容のコメントをしておられました。実感のこもった言葉でした。発見当時は、GFPがこんなに役に立つものに成長するとは思ってもいなかったそうです。優れた研究は、誰がその研究を行ったかとは無関係に“広がる力”を持っています。“広がる”ために要する時間はまちまちですが。
 今回のノーベル賞は、一見役に立たないと思われた研究が長い年月をかけて役に立ったよい例だと思います。ノーベル賞とは行かなくても、このような研究はたくさんあります。日々、いろいろな人の研究に感心させられています。



[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 小田広樹]

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