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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【生き物の名前】


キンチャクガニ

イチジクコバチ

ウミウサギカイ
※写真をクリックすると拡大します
岡本朋子 新年あけましておめでとうございます。BRHに来てはじめてのお正月を迎えました。研究の発展と、皆様に実験室ツアーやサマースクール、研究員レクチャーを楽しんでいただけるよう尽力いたします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 生き物にはいろいろな名前がつけられています。正式には世界共通の『学名』が与えられますが、それ以外にも国ごとに独特の名前が使われ、図鑑などに記述されています。例えば、現在BRH対象とされている生物の場合、イヌビワ、オオヒメグモ、アカハライモリ、ナミアゲハといった標準和名がつけられていおり、このような生物の和名は、その生物の持つ形態的・生態的な特徴や人との関わりが反映されています。例えば、他の仲間に比べて大きなものには “オオ” や “オニ” など、小さい場合は “コ” や “ヒメ” などがつけられます(オオヒメグモは小さいクモの中でも大きいということでしょうか)。
 また、他の生物と共生して生活する生物にはその共生相手の名が与えられることもあります。両手に小さなイソギンチャクを持って、捕食者から身を守る “キンチャクガニ” や、カイロウドウケツ (海綿動物) の中に棲む “ドウケツエビ”、イチジクの花粉を運搬する “イチジクコバチ” などがその例です。人との関わりを通じてつけられた名前としては、昔ガラス製品を海外から運ぶ際に、緩衝材として箱に“詰め”られた “シロツメクサ” (帰化植物) が有名です。
 また、その特徴を表すのに、よく知られた馴染み深い生き物で表現することがあります。例えば、ハゼ科の “ミミズハゼ” という魚は、海岸の礫間に生息し、そこに適応した細長く鱗のないぬるぬるとした体つきから、“ミミズ” という名が与えられました。これは、決してミミズと共生しているわけではなく、形態的な特徴を誰もが知る “ミミズ” に例えたものです。他にも、黄色と黒の縞模様が特徴的な “トラマイマイ” や “トラカミキリ” には虎の名が、長い耳を持つ “ウサギコウモリ” や、まん丸の白い殻を持つ “ウミウサギガイ” には兎の名が与えられています。外套膜に見事な縞模様があるトラフケボリという貝は、ウミウサギガイ科に属していますので、昨年の干支である虎と今年の干支の兎両方の名を持っています。
図鑑の索引を見て、どんな姿をしていてどんな生活をしているのかを想像するのは私の楽しみのひとつでもあります。皆様も名前の中にかくれんぼをしている生き物たちを見つけてみてください。
 2011年1月15日(土)に研究員レクチャーで発表させていただきます。写真をたくさん交え、植物の驚くべき繁殖戦略と、現在BRHで行っているイチジクの送粉について紹介いたします。興味のある方は是非足を運んでください。

[DNAから進化を探るラボ 岡本朋子]

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