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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【2011年9月の台湾調査】

岡本朋子 イチジク属植物の調査のため、9月に台湾に行ってきました。今回の調査で私にとって4回目の台湾訪問になります。単独で行動していたこれまでの調査と違い、今回は中興大学の先生とやる気に満ちた修士課程の学生さんたちと一緒に賑やかに過ごし、ひと味違った台湾調査となりました。
 私たちの調査の目的は、イチジク属植物の花の匂いと植物のDNAを採集することです。今回の調査対象とした種の中に、台湾榕(Ficus formosana)というものがあります。数年前はあちこちで見られた植物ですが、現在は探し回ってもなかなか見つけられません。急激に個体数が減った原因は、この種の根に薬効があるという噂がたてられたためです。ここ数年の間であっというまに野外の個体は採集され、姿を消してしまいました。しかし幸いなことに、台湾の先生が予め山で採集した個体を庭で育てている方を探していてくださり、無事採集をすることができました。これまでの単独調査では、ほぼ確実に諦めるという選択肢を迫られる状況です。やはり現地の方の助けは多大だと感じました。
 野生生物を研究対象とする場合、予め文献などで生育・生息情報を入念に調べるのはもちろんのこと、現地で歩き回り、目を凝らしてなんとか見つけ出す必要があります。もちろん旅を通じて目的の生物に出会えない可能性もありますし、出会えても、花が咲いていない、性成熟していないなど、状態が望んでいたものと異なることもあります。例えば、DNAは葉っぱがあれば採集できますが、花の匂いを採集するには、花を咲かせている個体を見つけなければいけません。さらに、どこに生育しているか、という情報の他に、その場所で採集をしてもいいのか?採集には正式な許可が必要か?など、採集に関して取り入れるべき情報がたくさんあります。いつもはここでかなりの苦労を強いられるのですが、今回の調査では全日程快晴という幸運と、台湾の先生が採集許可などを根回ししてくださったおかげで、想像以上にスムーズに(そして楽に)調査が進みました。はやく論文としてまとめたいという気持ちも高まります。
 最後に、調査の楽しみの1つとして忘れてはならないのが、地元の料理です。調査でたくになった後の美味しいごはんとデザートは格別です。私のお勧めは蘭嶼島名産の、水イモを蒸したものと、イチジク(Ficus awkeotsang)の種から作る愛玉氷です。皆様も台湾に行かれた際には是非お試し下さい。

追記:
 サイ科の動物は世界に5種が生息していますが、そのツノが工芸品や漢方薬として珍重されるため、いずれの種も乱獲が続き、絶滅に追いやられています。つい先日(11月12日)、西アフリカのクロサイが絶滅したというニュースを聞きました。台湾榕の場合もそうでしたが、“根拠のない薬効の噂”は生物たちをいとも簡単に絶滅に追いやってしまうということを知らされる出来事でした。


[DNAから進化を探るラボ 岡本朋子]

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