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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【イチジクの挿し木】

蘇 智慧 イチジクは私たちの主要な研究材料の1つで、これまでも何回かラボ日記に登場していたと思います。ラボ日記を読んで頂いている方々にとってはすでにお馴染みの名前になっているかもしれません。イチジク属植物はイチジクコバチとの間に、子孫を残すという共通な利益のもとで「1種対1種」という非常に種特異性の高い共生関係を結んでいます。しかし、その「1種対1種」関係はどれほど厳密なのか、A種のイチジクの送粉コバチはB種のイチジク花嚢には絶対に入らないだろうか?もし入ったとしたら産卵できるのか?子どものコバチが育つだろうか?身近に色々なイチジク植物種がいればこのような率直な疑問に答える実験ができるかもしれません。
 そこで、昨夏以来、研究補助員の佐々木さんが担当してイチジクの挿し木の作業に取り組んできました。インターネット上の情報によればイチジク属植物の挿し木は極めて簡単で、誰でもすぐできるようになると書いてありますが、実際にやってみるとそうはいきませんでした。最初、挿してはカビって挿してはカビって・・・なかなか発根してくれませんでした。挿し木専用土や発根促進剤と消毒剤の使用、挿し木枝の長さと切り方、屋内から屋外へと等々、佐々木さんによるさまざまな工夫をしているうちに、挿し木の枝も少しずつ長く生き延びてくれるようになりました。ところが、ある日一ヶ月ほど生き延びてくれた挿し木の枝が突然枯れてしまい、その土の中を見てみると、なんとダンゴムシがおりました。
 その後も工夫を重ねたうえ、イヌビワを始め、オオバイヌビワ、アカメイヌビワ、ギランイヌビワ数種の挿し木を試してみたが、現在成功したのはイヌビワだけです。昨年末に屋外(BRHの食草園)に置いていたイヌビワの挿し木は、食草園の改修のために、屋内に移動したところ、枝に付いていた葉が落ちてしまい、またかと思いきや、数日後それらの枝から新芽が出てきました。おそらく室内の温度が高いため、春の到来を感じてしまっただろうが、本当の春までこれから数ヶ月室内でうまく育つでしょうか・・・。
 ラボ実験も同じだが、マニュアル通り作業してもうまくいかない場合が多いにあります。経験を積み重ねることによって自前のマニュアルができあがるのです。これからもラボ一同でイチジク挿し木の自前マニュアル作成に努力していきたいと思います。

[DNAから進化を探るラボ 蘇 智慧]

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