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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【電車を降りて地面 を走ろう】

2002年2月1日

高木章子
 電車を乗り継いで大阪市内から高槻市の生命誌研究館に通勤しています。10年近く毎日同じルートを通 り、大阪駅での乗り換え以外は、ほとんど電車を降りることはありません。窓から見える景色もすっかりおなじみになってしまっています。
 先日、置きっぱなしになっていた自転車を無駄にしてはならじと、ほこりを払い、自転車屋さんでタイヤに空気を入れてもらって、少し走ってみることにしました。 久しぶりなので、街中を走るのは危ないので、近くの川筋につけられたサイクリングロードを走りました。
 安治川を少し遡ると大きな「こうもん」があって、淀川から水を引き込んでいるのが見られました。そこからさらに淀川の広大な遊水池を遡ったのですが、足もとの高さに水面 があり、水鳥が泳ぎ、同じ高さで、たくさんの人たちが思い思いに、サッカーやラグビー、居合、フリスビー、ジョギング、散歩などを楽しんでいました。電車の中で難しい顔をしている人たちも、ここでは、他の生き物たちと同じようにのびのびとしているように感じられました。かもめもこんなところまで飛んでくるのだと知りませんでした。
 電車で見る景色は、いつも同じ側、同じ距離、そして、同じ高さです。ほんのちょっと、高さを変え、見る角度を変えるだけで、今まで見えなかったものに出合えたのです。
 ところで、これを知らなかったのは私だけなのかもしれませんが、大阪の水道の供給源の淀川は、琵琶湖から発して各地に上水を供給しているだけでなく、使った後の下水をもう一度取り込みながら流れているのだと最近になって知り、ともてショックを受けたのです。考えて見れば当たり前のことで、元に戻さないと、水の流れは下流では枯渇してしまうでしょう。まだ、正直ぞわぞわしていますが、自然と人工の技術を上手に使った水利用にこそすごいと思うべきなのでしょう。というわけで、今、自然と暮らしの接点として、水の流れにとても興味が湧いています。
 今度は是非、淀川を、その源流である琵琶湖まで走ってみたいと思っています。もちろん自転車で。行けるのかなあ。
[高木章子]

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