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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【チールドラムとともにクロマチン繊維が凝縮!?】

2002年4月1日

工藤光子
 先日、やっと「DNAって何?part 2―DNAの複製と分配」のCG映像が完成した。この作品は、見えない世界をCGで描いた作品なので、テレビドラマのように最後に下記のメッセージを入れた。

 おわりに
 今まで見てきた「分子の世界」は、私たちが普段「見る」ことの出来ない世界です。しかし、現代の私たちは、新しい実験技術によって、それを「知る」ことができます。
 見ることのできないコトは、私たちが経験的に知っている「見る」方法に置きかえられてはじめて、それを「知る」ことができるのではないでしょうか。
 この作品では、研究者の好奇心や発見を共有しながら、私たち生きものになくてはならないDNAについて、あらためて「知る」コトを試みています。
 この映像が、今もあなたの細胞の中で働くDNAを「知る」手掛かりとなれば、大変嬉しく思います。

 DNAも遺伝子もゲノムも染色体も聞いたことはある、でもDNAがどこにどんな風にあって何をしているのか、はっきりとイメージできる人は少ないので、見た人の頭の中にDNAのイメージが描けるような映像を作ろう!と思ったのが5年前。通常、科学の映像は、興味を引く為に、ストーリーをつけたり、人の歴史に絡めたりして作られている。そこで、今の研究者が明らかにしたデータに強弱をつけることなく、淡々と描いて、つなげて、「教える」のではなく「見せる」ことへのチャレンジを始めたのである。このチャレンジは「part3―DNAは変化する」を今年度制作して完結予定なので、まだ途中。やり始めてみると、研究を行なっている人でさえ、転写、翻訳、複製のイメージが各々違うなど、いろいろなことを私に教えてくれた。

 今回の作品をスタジオで最終確認した時、イントロが流れ、映像が始まったら、ちょっぴり涙ぐんだ。
 物をつくるには、たくさんのプロの人の力が必要となる。私はプロの人がすまして小手先でやる仕事が嫌いである。今回はプロもセミプロもアマも、関わった人が、ちょっとずつうっかりのめり込んでくれ、全体の構成、シナリオ、CG、イラスト、音楽、効果音と皆の気持ちが一つになって作れた。映像を組んでいる時は映像の力に圧倒され、音を入れている時は、音楽の力に圧倒された。効果音を入れると、どこを見たら良いのかわかるようになるし、音楽を入れると、難しい絵もなんだか楽しくなるのだ。前回もCG映像に堅い音や、荘厳なイメージの音をつけるのを嫌がったのだが、今回はさらにおまぬけな音でお願いします。ということで、とても素敵な音楽がついた。DNAの映像なのだけど、あの曲を聞くと、真っ青な空を思い出し、とにかくおでかけしなくては!と思う。たくさんの人のパワーがちゃんと映像にまで出ていることを確認でき、自画自賛だが感動したのである。
 ところで、私はこの仕事の途中に「アフォーダンス」という考え方に出会った。スタッフの北地はどんなダンス?みたいな反応で可笑しいが、アフォーダンスというのは表現する人にはわりと知られた認識論らしい。Part3には、その理論を頭に叩き込んで、見えない世界を描くことがチャレンジとして加わったわけである。ますます大変そうだが、Part2を作り終えた時の感動がさめないうちに、せっせと頑張らねばと思う今日この頃である。
 新作は3月末よりホールで上映され、4月末にはDVD販売が開始される。ぜひ皆様の感想をメールでこちらに送って下さい!

[工藤光子]

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