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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【体を支える運び屋さん】

遠山真理
 街を想像してみてください。沢山の道があり、それぞれの目的にあった方向へ人々が歩いています。仕事に行く人、買い物から家に帰る人、犬を連れてお散歩している人などさまざまです。実は私たちの体をつくっている細胞の中にも沢山の道があり、さまざまなモーター分子が荷物を抱えて歩いています。分子にとって細胞はとても広い場所ですから、必要なときに必要な場所へ必要なものが運ばれるしくみがとても大切なのです。
 今回は、そんな細胞内の物質輸送に大活躍するモーター分子に注目した映像制作についてご紹介します。タイトルは「体を支える運び屋さん −モーター分子の活躍−」。BRHのビデオブースで今週末から公開する約20分の映像です。モーター分子をあらゆる方法で観る東京大学廣川信隆先生(生命誌10号Special Story:生命を支える運び屋分子生命誌46号Talk:ミクロの解剖学から体全体へ)の研究を通して、細胞内の分子の活躍が体作りにまで影響する様子を研究映像やCGを盛り込みながらまとめました。
 企画を始めたのは半年前。モーター分子を切り口に分子から個体までをつなぐ研究は生命誌が扱うテーマとしてぴったりだと思いましたが、目に見えない細胞の世界を表現することが難しい。研究にはクライオ電子顕微鏡・X線構造解析・一分子生物学など、多くの可視化手法が登場します。それらの研究映像を前面に出すのがよいのか、とっても魅力的な先生の語りを前に出した方がいいのか、CGはどれくらい必要なのか・・・。試行錯誤はつい先週までつづきました。というのも、文章で書かれた構成案をもとに練り上げたつもりでも、実際にくみ上げた映像を見ると、しっくりこないことがあったりで、本当に編集室に入る直前まで原稿の書き換え等をしていたのです。映像やCGの自然なつながりやナレーションにはかなりこだわりました。テーマは複雑ですが、モーター分子の気持ちになって楽しめる、親しみやすい映像になったと思います。ぜひ「体を支える運び屋さん」に会いにBRHまで足を運んで下さい。


 [ 遠山真理 ]

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