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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【展示案内スタッフ日記】

嶋本祐子
 この2年たらず来館者の方に展示案内をしてきましたが、今月いっぱいでBRHを離れることになり、案内できるのもあと1,2回と思うと寂しいかぎりです。
 先日帰りの電車の中で、近くに座っている人の読んでいるものがちらっと目に入りました。どうやら商品説明会での原稿のようでしたが、話すことばのなかに、なんと笑うところまで指定されていたのにはびっくりしました。BRHでは展示のなかで伝えたい所、大事な部分はいつもお話しますが、説明の仕方はそのときどきで工夫しています。最近新聞や雑誌で話題になった事を展示とつなげたり、自分なりに特におもしろいと思う点をくわしくお話ししたり。相手によっては私の方から質問していって関心を引き出します。もともと館で用意されたのは半分くらいであとは自分の裁量でしょうか。一番肝心なのは来館者の方が楽しんで過ごして下さること。だから展示をまわる間も来られた方の様子を見ながら、どういう所に興味を持たれているのか、退屈されてないか、いつも心を砕いています。
 案内するスタッフによってもそれぞれポイントが違ってくるので、何度来ても楽しめるのがBRHです。「笑」まで指定された原稿を見て、BRHのようなところで案内できて良かったなー…とあらためて思いました。
 展示の内容に関係なくても普段気になることをおしゃべりすることもあります。ある時年配の方が、自分は色弱でそのせいで小さい頃頭が悪いと誤解されて、大変悔しかった思い出を話されました。ある研究者が、生物全体で見れば色弱は単にヒトのなかでの多様性のひとつだと言っていたのを思い出しその話をしましたが、少しでもそれぞれの方の想いと、BRHでの体験がつながるといいなと思います。
 何よりうれしいのは、来館者の方が説明以上の何かを感じ取ってくれた時です。案内のあとでオサムシの標本をくいいるように見て、「本当になんでこんなにいろんな色と形なんだろう!」と感動していた高校生の女の子、「みんながここで展示見て、生き物は全部同じ所から来て、つながってるって知ったら戦争もなくなるんちゃうやろか?」と感心されていた方、「あなたを見てたらレイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』を思い出したわ〜」と喜んでくれた女性の方は今でも印象的です。
 いまだにうまく話せなかったり言い間違えたり「しまった」はきりがないですが、小学生からシニアまで、たくさんの来館者とじかに触れあえて、とても楽しい2年間でした。今までありがとうございました!


案内を盛り上げてくれる肺魚たち



 [ 嶋本祐子 ]

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