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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【レビュー論文からわかること】

坂東明日佳
 引き続き論文を読みながら(前回の日記)、その合間に学会など研究者たちの発表現場に出かける日々を送っています。特にここしばらくは「レビュー」というタイプのものを集中して読んできました。「論文」は一般的に研究者が自分のオリジナルな研究成果を発表するためのものですが、「レビュー」は研究者が自分の専門分野に蓄積した研究成果を総合し、その分野全体で解明されてきたことや今後の課題についてまとめた読み物です。オリジナル論文に混じって掲載されることもありますが、レビュー専門の雑誌も存在します。
 毎年数多くのレビュー論文が生まれているのをみると「自分の専門分野全体が見通しにくいな」とか、「これまでの知見を一度整理して今後についてじっくり考えたいな」と多くの専門家がきっと感じているに違いないです。今更ですがそれほど、やはり、研究の情報の量はものすごいのです。そこで私も、膨大で詳細な研究論文の山にいきなり挑む前に、入り口としてせっかくあるこのレビュー論文のしくみが使えないだろうか、と検討しているところです。
 私は今タンパク質のはたらきについて整理をしています。ある基本的な機能と構造を共有するタンパク質をテーマにしたレビューの収集を試みると、例えば「神経発生における○○タンパク質の役割」のように、生きものの臓器や現象の違いごとにまとめられた、実にさまざまな着眼点で書かれた相互に異質なレビュー論文が一緒くたに集まってきました。そういえば学会発表でも、似た性質のタンパク質を解析している研究は便宜上同じセッションとして扱われていますが、その内容や研究者の関心は多岐にわたっています。
 「研究のトピックがこんなにバラエティに富むのは、同じ性質のタンパク質でも生きものの体の中では様々な役割を担っているという証拠だよね」と実感する機会はこのようにたびたびあるのですが、実際にどれほど多様なはたらきをするものなのか全体を見通せるようなレビューや講演にはまだお目にかかっていません。研究者がまとめてくれるのはそれぞれが関心ある現象とタンパク質との関わりまで。それらの断片をまとめてもう一段階レビューする、そんな方法を意識しながら今日も論文と取り組んでいます。

 [ 坂東明日佳 ]

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