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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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絵巻と向き合う

2013年7月1日

平川美夏

話題は現在作成中の生命誌マンダラについ向かいがちですが、20年を迎えた生命誌絵巻と向き合っています。はじめて出会ったのはやはり20年前、中村館長の著書「自己創出する生命」のカラーの口絵です。さまざまな生きものがところ狭しと並び、1枚の絵でありがなら生きものの歴史を描いた1冊の絵本のようだと思った記憶があります。口絵の解説を読み返すと「35億年前に生まれた生命体(恐らく一個の細胞)を出発点に、現代の3000万種ともいわれる生きものが生息する緑の地球になるまでの過程をできるだけ正確に、かつ簡潔で見やすく描き出す試みの第一歩としたのがこの図である。」とあります。生命誌の象徴としてすっかり定着した生命誌絵巻は、実は試みの第一歩で、まだ先があったのです。さらに「今後、化石やDNA分析を含め、古生物学、進化学、分類学、分子生物学、発生学……あらゆる分野から次々データが出てくるに違いないので、それを取り入れて、この図を完成させていきたい。それが生命誌研究の一つの仕事である。」と続きます。つまり生命誌絵巻のアップデートが私たちのミッションだったのです!

さて、研究館開館から20年の今年、この仕事に本腰をいれて取り組みます。生命誌絵巻、新生命誌絵巻、そして生命誌マンダラが、装いも新たにお目見えします。その一つがBRHカードのお楽しみ、今年は立版古です。立版古というのは、江戸時代に流行した和風ペーパークラフトのこと。錦絵をジオラマ風に組み立てて遊んだそうです。そこで生命誌を代表する3つの絵が組み立てて楽しむ立体バージョンに変身します。第一弾はもちろん生命誌絵巻です。せっかくの立体ですので、形だけではなく内容も立体的に読み解けるように、知恵をしぼりました。立版古を手にとってじっと絵巻と向き合いながら、その背景にあるさまざまな知識や物語を考えると、絵巻に託された生命誌の考えが、重さと形をもって伝わってくるはずです。

そしてサマースクールでは、表現セクターのプログラムとして「新新・生命誌絵巻を作ってみよう」を企画しています。20年目の絵巻にはいったいどんな生きものが登場し、どんな物語を語るのか。一緒に新たな表現で描く試みに挑戦しましょう。今年の夏は生命誌絵巻が熱い!ですよ。

[ 平川美夏 ]

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