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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【大義名分】

2015年5月15日

川名沙羅

先日、テレビ番組で考えすぎてしまって生きづらいことを悩んでいる芸人さんに心理学の先生が「あなたが生きていることの大義名分は何ですか?」と問いかけていました。3名の芸人さんの回答はそれぞれ「来世でもっといい生命体に生まれ変わるため。」、「長い時間をかけて進化してきた生きものの歴史を自分の代で止めないため。」、「何にもしてないのに幸せそうな相方へのねたみが原動力。」でした。それをうけ先生は「抽象的な考えだけを生きるよりどころにすると心が折れやすいので、もっと具体的でわかりやすい大義名分(例えば、ペットや家族のために生きるなど)ももつと生きやすくなりますよ。」とアドバイスしていました。

「私が生きていることの大義名分とは?」テレビの前で、自分に問いかけてみましたが、すぐには答えが思い浮かびませんでした。大人としてこんなことではいけない! 不安になってきたので、家族にも問いかけてみたところ、「生きているのは目的じゃなくて、結果じゃないの? 」と問い返されました。「うーん、そうかもしれない。石ころも私も昆布も宇宙が誕生した時はひとつだったのに、今はそれぞれ別のものなんだもんな。」としみじみ。生きることの大義名分は見つかっていませんが、宇宙の始まりから自分へとつながる時間の流れに想いを馳せて晴々とした気持ちになりました。家族といえども頭の中で何を考えているかはわからない。普段、口にしないような問いを投げかけてみると、新鮮な回答が待ち受けているものですね。自分一人で考えていると悶々と前に進めない時も、問いや考えを口に出し、誰かと話すことで発想の切り替えができたり、新たな考えを見出したりできる、語り合うということの大切さを実感しました。

ところで、生命誌研究館のホームページでは語り合いの場「生命誌の広場」があり、研究館の活動について、季刊誌を読んで感じたことなどを書き込んでいただけるようになっています。ぜひ、お気軽にみなさんの声をお聞かせください。いろいろな方の考えを出し合うことで、生命誌のこれからにつなげていきたいと思っています。

[ 川名 沙羅 ]

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