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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【目をあわせること、聞くこと】

2016年2月1日

村田 英克

元旦に、申年に因んで、ゴリラ研究の第一人者山極寿一先生のエッセイがある新聞に掲載されました。考えさせられたことの糸口に、少し引かせて頂きます。サルと人間は、世界を認識する際、視覚に頼ることが多い点は共通だが、互いに視線を交叉する意思疎通の場面で、作法の用い方に大きな違いがあると。サル社会では、相手をじっと見つめることは強いサルに許された威嚇の行為であり、弱いサルが強いサルを見返すと挑戦と見なされ攻撃を受ける羽目に…。人間の場合は視線を交わす作法は文化や状況によって多様で豊かな意思伝達の表現手段であり、意味を伝える言葉に対して、視線は感情を伝えるが、両者は決して代替えできない。だから、世界を言葉や文字で覆いつくすほどに情報機器が普及した現代において、視線の交叉を忘れつつある人間社会はサル社会への移行につながるのではないかと山極先生は危惧しています。

尊厳と云うとおおげさに聞こえるかもしれませんが、人が人と接する際に尊重し合う根本に、目をあわせること、と、耳を傾けること(聞くこと)があるのだと思います。

[ 村田 英克 ]

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