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研究館より

表現スタッフ日記

2021.08.03

食草園と共に

新展示「昆虫と植物のかけひきの妙(7月3日~11月28日)」にあわせて、研究館の屋上にある食草園も充実させることになりました。

蝶の幼虫の食べる食草と、成長した蝶の吸蜜花という植栽の選定を改めて絞りこむことになり、吸蜜花でもないもの、複数あるもの、来館者の方々に見て頂く際に、邪魔になる植木鉢の木々を里子に出すことから始めました。

4月、春先にピンクのかわいい花をいっぱいつけてたのしませてくれた2m近くに育ったエリカを根から抜いて処分、おかげでスミレゾーンに太陽の光がいっぱい差し込んで余分のスペースも生まれました。

蝶のための食草がすべて見渡せるようになり、園内に敷かれたレンガの遊歩道を歩けるように木々も刈り込みました。どこにでも芽を出す明日葉、ウマノスズクサ、野イチゴ、などは決められたゾーン以外は処分、新たにシロツメグサ、クララ、アザミ、野スミレ、芝桜の苗を植えました。

5月に入ると草取りも済んで、ミカン、ウマノスズクサ、ランタナの木を中心に大雑把に4つのゾーンを設け、アザミと萩、明日葉とクララ、スミレとヨモギ、ユリとホトトギスとサルトリイバラと決めました。空いたスペースには多年草と1年草を組み合わせながら、1年を通して蝶たちのための葉や花を用意したいと話しています。

朝、園内のお世話に入るとナミアゲハが元気に飛んで見せてくれます。カラスザンショウの頂上に終齢幼虫のかわいい姿を見ることもあり、ベニシジミはキハダで羽を休めているようす。忙しく飛び回っていたアゲハがちょっとレモンの葉に止まったので、あとで見ると葉の裏に黄色い小さな卵がひとつ、、、そんな日常です。

蛹になった蝶は姿を見せなくなることが多いのですが、スタッフのアイディアで、蛹の近くに小さな赤いリボンをつけるようになり、来館者の皆さんもそれを見て喜ばれますし、園内をご案内しているとご自宅での蝶の様子も話して下さいます。そして来館者の多くは、こんな4階の狭い空間を蝶はどうやって見つけるのでしょう?よく見つけますねと驚かれます。いつもお答えできない難問です。

7月17日(土)イベント当日の食草園にはエノキの葉にゴマダラチョウの蛹(4日後には無事に羽化)、ギシギシの葉にベニシジミの幼虫が見つかり、モンシロチョウも飛んでいました。 食草の名前と、その葉を利用する蝶の美しいイラストがあしらわれたネームプレートのおかげで、食草と蝶の関係がわかりやすくなりました。午後、来館者の方々をご案内しているときには、ツマグロヒョウモンが優雅に園内を飛びまわり、その姿を来館者と共に目で追いながらのうれしいひとときでした。
 

渡邊喜美子 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター