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研究館より

ラボ日記

2021.03.01

身近な生物である鰓脚類の進化

鰓脚類はどんな生物でしょうか。カブトエビやミジンコと言えば、何となく頭に浮かぶかもしれませんが、カブトエビとカブトガニを混沌としている方もおられるほど、あまり知られている生物とは言えません。しかし、鰓脚類が非常に身近な生物であることは事実であり、田植えして一週間も経てば、その田んぼにはカブトエビ、ホウネンエビ、カイエビ(図1)などと言った鰓脚類は必ず泳いています。これほど身近でありながら知られていない生物は他にいないかもしれません。
 
 
図1:鰓脚類写真


鰓脚類は身近な生物だけでなく、昆虫の起源の解明につながる重要な進化的位置にあります。昆虫類は鰓脚類と共通祖先から分かれ、淡水から陸上進出を果たしたという美しい進化ストーリーが考えられていました。しかしながら、このストーリーは近年の分子系統学の研究からあまり支持されず、海辺の洞窟に生息するムカデエビという生物が昆虫類に最も近縁であることが明らかになりつつあります。我々は昆虫の進化の研究の延長として、鰓脚類の進化にも興味をもち、その系統関係を調べてみました。以前のラボ日記にも書きましたように、海外のサンプルの再採集と再解析のために、時間がかかりましたが、研究結果をまとめた論文は日本遺伝学会誌Genes & Genetic Systemsに受理されました(Uozumi et al., in press)。鰓脚類の系統関係と分岐年代の推定から、興味深い知見が得られました。鰓脚類の初期分岐はこれまで考えていたよりも古く、カンブリア紀前期に遡ることが示唆されました。また、主要な分類群が分岐したあと、長期間(数億年?)に渡り分類群内の種多様化が生じていないことが分かりました(図2)。これは我々がオサムシの研究から提唱した「Silent evolution」にも通じるところがあり、それをもたらしてきた生態的、進化的メカニズムの解明が期待したいと思います。
 
 
図2:鰓脚類系統樹
 
最新論文:鰓脚類の系統進化

蘇 智慧 (室長)

所属: 系統進化研究室

カイコの休眠機構の研究で学位を取得しましたが、オサムシの魅力に惹かれ、進化の道へと進みました。1994年から現在に至るまで、ずっとJT生命誌研究館で研究生活を送ってきました。オサムシの系統と進化の研究から出発し、昆虫類をはじめとする節足動物の系統進化、イチジク属植物を始めとする生物の相互作用と種分化機構の研究を行っています。