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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【雄チョウの吸水行動の重要性】

2012年9月18日

龍田勝輔

今年の7月にNaturewissenshaftenという雑誌にアゲハチョウ(シロオビアゲハ)の吸水行動に関する論文が発表されました。広島大学の本田先生のグループの論文です。新聞の記事にもなっていたのでご存知の方もいるかと思います。アゲハチョウの雄は集団で吸水行動することが知られていますが、この論文では吸水行動によってアンモニアを窒素源として摂取し筋肉や精子の生産に役立てていることを証明しています。今年のサマースクールの参加者の方からこの論文を教えていただいたのですが、この参加者の方も大学生のときにナミアゲハ雄成虫の羽化後のナトリウム塩摂取が配偶行動に重要な役割もつことを研究されていました。これらの研究は、羽化後の摂食(吸水)行動が彼らの繁殖(配偶行動)を成功させるために重要であることを示しています。

私たちの研究室では、今年、ナミアゲハに加えて、クロアゲハ、ジャコウアゲハ、ナガサキアゲハの4種を同時に飼育してきました。累代飼育のために毎世代成虫が羽化してくるとハンドペアリングという方法で交配させていますが、この4種を飼育していると、ハンドペアリングが簡単にできる種とそうでない種がいることがわかりました。ナミアゲハ、ジャコウアゲハは簡単なのですが、クロアゲハやナガサキアゲハは1~2割程度の雄しかうまく交尾してくれませんでした。雄が把握器によって雌の外部生殖器付近をつかめばほぼ交尾成功なので、実際にハンドペアリングを行うとうまく交尾できるか否かはほぼ雄に依存していると思われます。

クロアゲハやナガサキアゲハの低い交尾成功率の原因は私自身はっきりとはわかっておらず、考えれば様々な可能性があるわけですが、先の研究結果をふまえると、アンモニアとナトリウム塩を雄成虫に摂取させることでハンドペアリングでの交尾成功率が上がるかもしれないと考えています。

[ チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ 龍田勝輔 ]

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