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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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色々つなぐ生命誌

2014年10月15日

尾崎克久

ありがたいことに、異分野の方からシンポジウムなどに招待をして頂く機会が増えました。昆虫を使った研究に全く馴染みのない皆さんに向けて、アゲハチョウの味覚に関する研究を紹介して興味を持って頂けるのだろうか?といった完全なるアウェイ感から来る不安を感じながら会場に向かうことも良くありますし、やや違和感があるのだが断る理由も浮かばず引き受けたご提案もありました。しかし、これまで講演依頼を引き受けて後悔をしたことがないどころか、全てで参加して良かったと思っています。

何よりも大きいのは、おそらくその会にご招待をして頂かなければ、触れる機会がなかったと感じる発表を沢山聞くことができます。世の中はまだまだ自分が知らないことだらけと思い知らされ、問題を解くための理論的なアプローチに感動し、自分ももっとがんばらなくてはと良い刺激を受けました。そして、近い分野の方からは出たことがないような質問や指摘を頂くと、これまで気づけていなかった視点から考える切っ掛けにもなります。こういった経験の積み重ねによって、やがて新しい展開につながるのではないかと期待しています。

研究の世界では、別の大学や研究機関に所属している研究者同士で、共通の研究テーマに取り組む「共同研究」が行われるのが一般的です。類似する研究を行いつつ、得意分野が異なる研究者が協力し合うことで、お互いの研究を発展させるというのが最も多いパターンではないかと思います。最近の個人的な経験から、研究としての興味を共有することができるなら、専門分野が大きく異なる研究者の共同研究によって、新しい方向性を見つけることができる場合もあるのではないかと期待が膨らんでいます。8月の進化学会の運営はとても忙しく、体力的にも厳しいものがありましたが、当館のイベントが切っ掛けで始まった異分野の共同研究による成果を拝聴することができ、疲れが吹っ飛ぶほど嬉しく思いました。

研究と一般の方々をつなぐことが生命誌研究館の大切な仕事のひとつですが、研究者同士をつないで新しい展開を生み出すことも、当館の大切な役割ではないかと感じております。これからは、そういった視点からも、イベントの企画を行えればと考えています。

ちなみに、僕も少しだけお手伝いをさせて頂きましたが、異分野の研究者の方が生み出したアイデアがひとつ、具体的な形になっていますのでご覧頂けると嬉しいです。

InsectInDB (Insect Interaction Database for integrating chemical ecology and genomics)
http://insect-plant.org/

[ チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ 尾崎 克久 ]

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