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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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「形づくりと細胞周期の関係」を考えてみましょう!

2017年4月17日

橋本 主税

昨年のラボ日記にも書いていますが、細胞周期・細胞増殖と発生・分化・形づくりの関係に強い関心を持っていろいろと考えています。いままではとにかく論文を読んでは妄想を繰り広げる事をしてきたのですが、そろそろ実験の方向にも動き始めようかと考えるようになりました。とは言っても、新しい方法論をいきなり実験系に持ち込む事は簡単ではありません。そういうとき私はとにかく専門家から教えを乞います。

この流れから調べてみて分かったのですが、細胞周期屋さんは細胞分裂や染色体の複製に興味があるのであって、私が関心を持っている「間期(分裂も複製もしない時期)」に興味を持っている方があまりいません。また、細胞周期を発生・分化の文脈で考えようとしている人もほとんど存在しないと言っても良いかもしれません。もう、実験の教えを乞う以前の段階で止まってしまいました。こうなったら細胞周期屋さんに発生にも興味を持ってもらおうと思い、何人かの方に研究館へきていただいてシンポジウムでも開こうと考えました。

でも、細胞周期屋さんだけが学会発表するようなものになってもつまらないので、やはり金子邦彦さんにご登場いただき、生命の本質を語っていただこうとも思いました。金子さんは実験系ではなく理論の方です。算数で生命を語ろうとしていらっしゃる方です。以前に彼が、幹細胞について理論的考察をしていらっしゃいましたが、そこにはゆらぎと周期性が必要であるということが見えてきたそうです。周期性を維持しているかぎり幹細胞的性質は維持しているが、周期から逸脱すると幹細胞的性質は無くなるみたいな話だったと記憶しています(少々不確かかもしれません)。ただの言葉だけの類似性かもしれませんが、私が考える発生の中での細胞周期の意味もまったく同じ概念で語る事ができるのではないかと思っているのです。

金子さんに二年連続でお声掛けしたのは、やはり物事の本質をついていると私が思うからで、私たち生物学者がちまちまと実験をしている事の意味は「実はここにあるんだよ」ってことを金子さんは理論を通じておっしゃっていると思っています。多能性・多分化能と細胞周期や細胞分化の話と周期性やゆらぎの概念を脳みその中でどのように結びつけられるのか?この集まりではそこが一番重要でしょうし、これこそが金子さんのひとつの存在意義ではないかと思ったりするのです。発生の文脈である事を語り、細胞周期の文脈で別の事を語る。それらはたぶんまったく相容れない話に聞こえるかもしれませんが、一度それらをバラバラにして理論の視点でまとめ直してみたらハッとする何かが出現するような気がします。当たれば面白い試みになるでしょう。はずれてもそれなりに意味は見いだせそうです。

7月15日の「生命誌の日」にこの企画を開催いたします。皆様も不思議な世界に足を踏み入れてみませんか?

[ カエルとイモリのかたち作りを探るラボ 橋本 主税 ]

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