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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

【バックナンバー 】

1999年3月15日

 生命誌研究館では、大きな水槽に(もちろん水を入れるのではなく、下に土をひいて)ナナフシを飼っています。2年前の夏に岡田館長が石垣島に行ってとってきたアマミナナフシです。飼い始めた当初は長く飼うつもりはなかったのだけれど、やはり本物は標本と違っておもしろい。ナナフシたちは普段はほとんど動かず、ときどき動いたかと思うと、周りをうかがうように実にゆっくりと動く。それもそのはず、ナナフシはあの細長い体で木の枝に擬態しているのだから、あまり早く動いたら枝でないことがわかってしまう。ところが、水槽を掃除するときなど、こちらが手を入れて捕まえようとしようものなら、びっくりするほど素早く動いて逃げ回る。時には、逃げる方向を間違えて腕に登ってきたりするものだから、スタッフの中で、実は昆虫が苦手な工藤嬢などは怖がって大変。(なに? 生命誌研究館のスタッフなのに虫が苦手だと? いや彼女は植物全般と動物の中でもとりわけネコ科の大ファンなのです。どうぞお許しを)でも、あんなに長い脚を6本も持っていたら、どこかで引っ掛かってむちゃくちゃになってしまうかと思いきや、見事に動き回る。その姿を見るのが、なぜか私は好きなのです。
 もうひとつナナフシを飼っていて楽しいと思うのが、卵の殻から幼虫が出てくるとき。ナナフシの卵は大きさが2ミリほど。そこから2センチ程の幼虫がゆっくりと脚を伸ばしながら出てくる。(蝶などの「完全変態」の昆虫と違い、ナナフシは「不完全変態」をする昆虫なので、初めから成虫と同じ形をしています。それが脱皮をくり返し大きくなる。) いったいどうやってあの長い脚と胴体が殻の中におさまっているのか。出てくる順序はどうなっているのか。今だにはっきりと把握していないのですが、とにかく見ているだけで面白い。
 昨年もそうだったのですが、毎年、冬の間は卵が土の中に入ったままで、幼虫はほとんど生まれず、暖かくなると一斉に孵化するようです。今年もそろそろ出てくるかなと毎日水槽を見ていたら、昨日第一号の幼虫を発見。どんどん生まれてくるのが楽しみです。
 という訳で、もうしばらくナナフシは飼いつづけることになりそうです。水槽は展示ホールの入り口近くに置いているので、是非見に来て下さい。
[加藤和人]

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