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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

【バックナンバー 】

1999年4月1日

 昨日は、機関誌『生命誌』の企画会議でした。研究館に関って下さった方たち、一緒に仕事をした人たち、学会で発表した研究者たち、次の『生命誌』をどんな人たちで構成しようかと、悩みながら、楽しんでいます。
 例えば、こんな人。プラニングの会社で村おこしを手伝っているのだけど、バンバン開発してお金を使わせるのではなくて、村の青年団だとか寄り合いだとかに参加して、同じ畳の上で話を進めるのだそう。何年もかけて、その地域の人達の時間の流れと同じスピードで仕事をするというのです。経済的には、時間がお金という現代の経営の論理に反するのでしょうが、村の人達が暮らしの中で感じていることを形にしていく作業を、一緒に楽しみながらやっているらしいのです。
 また、例えばこんな人。お母さんも、お姉さんも、そして嫁いだ家でもう何十年も蚕を飼い続け、蚕が好きで好きでたまらず、蚕に生かされていると本当に自然に口に出てくる人。
 実験室での生物学の研究だけでなく、暮らしの中で、生命に向き合って生きている人たちもとりあげていけたらと思います。生き物と生き物の関係の中で、生き物の時間で生きる。生命誌で目指してしていることはとても身近なところにあるのですね。そういう生活ができるかどうかは、その気になるかならないかというだけで、本来誰でもできることなのかも。
 そこで、家の生き物。数ヶ月前、ベランダに現れて、私を驚かせたホ乳類、隣の子ネコ君は、暖くなるにつれ、少しずつ若者らしくなっています。洗濯物にじゃれ付いたり、プランターのアネモネに鼻を寄せたりと、なかなか絵になるしぐさを見せてくれます。この前、隣の主人がいない夜、必死の鳴き声がするので、カーテンを開けると、すぐそこに、ビー玉のような目でこちらをじっと見つめているではありませんか。何を隠そう、初対面で悲鳴を上げた私の心は、少しずつネコ君に傾き始めているわけです。でも、しかし......。私は、触れていませんよ。隣はどうも、一人暮らしの男性のよう。ネコ君に浮気をさせてはいけませんからね。(ちなみに私は女性で、ネコ君は性別不明。)
[高木章子]

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