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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【頭の中は・・・。】

村田英克
 生きていることの最小の単位は細胞。細胞は、水、核酸、タンパク質、それから脂質などの物質からなるとわかっている。けれども、それらをただ混ぜても細胞にはならない。では丁寧に混ぜたら細胞になるのだろうか。今のところ、どのような丁寧さで混ぜたら細胞になるのかはわかっていない。でも分子一つ一つの関わりに何らかの機序があって、ツボのところを押さえたら「生きている」状態が生成する場面に立ちあえるだろうか。38億年前にはそういうことがあったから今私たちがあるわけで、人の手でそれを行ないたいという再現欲ではなく、生命の根っこのところだけにそれを見てみたいとは皆思いますよね。「知る」ことはやはり快楽で、それは同時にただ共有できる喜びでありたいと思う。
 「生きている状態がはじめて生成する場面」というのは、僕もずっと思っている「妄想」の一つですが、この「妄想する」ということは、SICPの中では積極的な意味をもった言葉として使われている。皆が元気よく「妄想しました!これ見てください。」とか「まだ、妄想段階なんですが」など言いながら企画をはじめ、最近は中村先生までが「ちょっとこれは、私の妄想なんですけれど・・・」とおっしゃるので、そもそもの妄想の意味が気になって、そんな時の『広辞苑』を引きました。一つは仏教用語で「みだりなおもい。正しくない想念」、もう一つは心理学用語で「根拠のない主観的な想像や信念」とあった。おそらく私たちが用いているのは後者の変異体。変異箇所は冒頭の「根拠のない」という部分。「根拠」とは、主観的に対しての客観的、または科学的なものと解釈され、私たちはそこのところを、そのことは当然踏まえているけれど、「知る」ことと「感じる」ことは重なっているのだから、ものごとの最初の段階では、むしろ「感じる」を優先させるべし!と変異させているわけです。もちろん「主観的な想像や信念」が、多くの人と共有できるものとなるには、共感し得る客観性が必要で、企画はそうやって形になっていかなければならないのですが。
 今回言いたかったのは、「Oh!脳」はじめました!ということだったんです。今はまだこれは「妄想段階」かもしれません。これは「いつでも直せる」というWebの特性?を活かしてはじめました。これから皆さんと広げて続けていくためのとっかかりだと思っています。いろいろご意見をお待ちしております。
 あっ、今回のタイトルは「頭の中は、妄想でいっぱい。Oh!脳」と読みます。



[村田英克]

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