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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【関わりを大切に】

浦川哲生 ようやく、愛づる展が完成しました。屏風絵です。研究者の方々、デザイナーさん、展示業者の皆さん、そしてSICPスタッフの多くのお力添えを頂き、無事に「蟲愛づる姫君」の物語を完成させることができました。特にデザイナーさんには本当に時間の無い中でさまざまな無理を聞いて頂き、たいへん感謝しています。
 空間を大きく使って、映像やハンズオンでの展開もできる館内展示と、14cm四方のカードの中で研究内容を表現して読者に伝えるBRHカードでは、何から何まで作る勝手がちがうのですが、大勢で一つのものを作っていく中で最初のアイデアが段々と変化しながら、さまざまな背景を持った読者の方々を想定し、より多くの中身を伝えられる表現を目指して、最終的に皆のコンセンサスが取れた良い形に落ち着いていくのが共通するおもしろさだと思います。自分の考えを他の方の考えとすり合わせながら、1つにまとめる、ということは当たり前のことなのですが、その中で自分の感じるおもしろさ、ワクワク感を皆と共有できるよう表現にしていくのは本当に難しいです。初めに感じた印象も人と話したり、時間が経っていく中であやふやになっていきます。そんなとき、周りの人が何をおもしろいと思ってくれるか客観的な意見を聞くことはとても大切だということの意味を実感することができました。
 科学館に足を運ぶとさまざまな展示が設えてありますし、書店に行けば科学雑誌、科学書が並んでいますが、それらができあがっていく過程は読者の視点からはふつう見ることがありません。SICPでは生命誌のコンセプトを表現する独自の展示を製作したり、毎号のカード・ジャーナル(ほんの少しだけ年刊号にも関わったのですが)の編集を一人が両方行いますから、多くの方と関わりながら内容ができあがっていくまさにその場所で仕事をすることができます。後の経験としてたいへんすばらしいことだったと思います。
 突然ですが、私はこの3月でSICPを離れます。皆さんと一緒に仕事を始めてから、早いものでもう1年。4月に着任して、いま座っているデスクに着いたのがつい先日のことのようです。その間、研究館で季刊誌の編集や取材、展示の企画、催し物の会場係や司会、そして学校の生徒さんから年配の方までさまざまな来館者の方のガイドなど、いろいろな仕事をやらせて頂きました。何から何まで初めてのことで、皆さんのご指導ご鞭撻や励ましを頂きながら、この一年、スタッフとしてやってくることができました。この場を借りて御礼申し上げます。そして、今後ますます生命誌の輪が広がっていきますよう応援しています。
 どうもありがとうございました。

[浦川哲生]

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