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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【着実に、時には身軽にうつろう】

2016年12月1日

有馬 えり奈

BRHで働き始める前、都市と郊外の生きものの分布の違いを調べていた私の興味は「人間と生きものがともに生き続けるにはどうすればよいのか」でした(もののけ姫の映画が好きでした)。研究と気持ちのズレに悩んでいた私は生命誌と出逢い「ああ、これだ!」と思ったのです。「人間も生きものであり、自然の一部である」という当たり前なことに気づかず、生命誌絵巻の扇の外から生きものを見て研究していたんだと気付かされました。働き始めてからは、細胞やゲノムのこと、そして生きものが歩んできた系統樹の話にドキドキし、笑いが絶えない毎日でした。こんなに楽しい場所を離れるのは寂しいのですが、やりたいことができたので、もうすぐ卒業します。

勤めた5年の間に「生命誌版 エルマーヒストリーの冒険」展や生命誌の階段などの展示、季刊生命誌、動画制作や、Facebookの発信、ホームページ更新、催しなどを担当しました。特に、チョウの訪れを待つ食草園は5年間担当し、飛び出す絵本を作ったり、WEBコンテンツをつくったり、庭のお手入れに熱中したりと好きなことをやらせてもらいました。なんと今年は、7,8年ぶりにキアゲハの幼虫が来て、さらに、夏から秋にかけてジャコウアゲハの幼虫が20匹以上育ち、そして秋の終わりにはミカンの実が十数個みのりました。まるで、食草園の生きものたちが卒業祝いしてくれているかのように賑やかな一年でした。食草園を通して、生きものを「愛づる」気持ちが私の軸になりました。

卒業する前に、今取り組んでいる2つのことをお伝えします。ひとつは「生命誌の階段」の刷新です。これは、WEBでお楽しみいただけるコンテンツです。今回、メインの物語を更新し、BRHカードのリサーチを120記事ほど追加しました。物語を読んで興味が湧いたら、BRHカードで関連記事を読んで深堀りしてください。展示を通してさまざまな生きものの歴史物語を知り、「生きているってどういうこと?」という基本的な問いを考える出発点にしていただけると嬉しいです。12月15日に公開予定です。

2つめは「生命誌三つの表現 紙工作ダウンロード」です。本日より季刊「生命誌」77号「立体 生命誌絵巻」の紙工作をダウンロードできるようにしました。なんと、季刊誌の紙工作より一回り大きくなっての登場です。3ヶ月おきに新・生命誌絵巻や生命誌マンダラもダウンロードできるようにします。ご自宅で生命誌を考えてください。

BRH卒業後は、私を育ててくれた大好きな「熊本」という場所にこだわり、「生きもの(ヒト)と生きもの(ヒト以外)が共に生き続けるとはどういうことか」を引き続き、考えていきたいと思っています。38億年続いてきた生きものは、ヒトを含め本当に興味深いと思います。今後もみんなで一緒に続いていきたいですね。それでは、みなさん、お元気で!

[ 有馬 えり奈 ]

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