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BRHサロン

「大草洋の国」モンゴル夏紀行

小野澤知之

遥々と大草洋の恵みかな
一夏(ひとなつ)の南ゴビでの生命誌

昨年の夏休みに、少年時代から思いを馳せ夢を描いていた大地を遂に踏んだ。モンゴルに対する形容句は、「草原の国」「蒼き狼の国」「詩の国」など多いが、伸びやかで広やかな「草洋の国」という呼称がいちばん好きだ。現地での実感から、これに「大」の字を冠した名を献じた。

プロペラ機から見下ろす草原の景色は圧倒的であった。8月のゴビの風が大草洋を押し渡り、香り草が総揺れに揺れる。夏の大地には、恵みの生命が溢れ出ていた。

モンゴルの草原。

とてつもないものとの出会いは、人生至福の瞬間である。地球の生命誌ともいえるモンゴルの大草洋が、まさにそれであった。

自然環境の極限の地ゴビ砂漠にも、「幸福の虫」ゴリオのような小動物から「砂漠の船」駱駝のような大動物までたくさんの動物が生存している。また、イヨリン・アム(鷲の口)渓谷では、太古の恐竜の化石が多く発見されている。

モンゴルの家畜5種(馬・牛・羊・山羊・駱駝)を総称する「五畜」という言葉を知り、モンゴリアンブルーの大空の下で白い獣糞(アルガリ)を跨いだのも楽しい思い出である。

夜は、宿泊したゲルが草の香りにすっかり包まれていた。仰いだ満天の星さえも、有名無名の座を織り成しながら、完全に生命あるものとして煌めいていた。

「一期一会」から発し、「一国一会」「-草一会」「一羊一会」「一馬一会」「一川一会」「一石一会」「一虫一会」「一雲一会」「一星一会」など、モンゴルの大自然との出会いの思い出が次々と成句となってくる。

夕べに弾く馬頭琴が去り行く一夏(いちげ)を奏でていたが、けっしてもの哀しいだけではなく、永遠の強い生命の調べであった。

(おのざわ・ともゆき/NTT移動通信網株式会社代表取締役副社長)

※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

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