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Special Story

刺胞動物を探る
サンゴの一風変わった進化

毒を発射する細胞:内田絋臣

刺胞動物に特有の刺胞は、刺細胞の中で作られる。刺胞には毒液がつまっていて、先端の引き金に刺激が与えられると中の刺糸がパッと反転しながら飛び出し、その先端から毒液が出る。刺胞は毒液発射カプセルなのである。面白いのは、ほんの一瞬の間にこれが起こることだ。刺胞の発射は、物理的な刺激でも起こるが、他動物の存在(実際にはそのタンパク質)にもっとも敏感だ。刺細胞の上端にある感覚器への刺激が発射の引き金となるのだが、同じ餌があっても飢餓状態の時と満腹状態の時では反応が異なる。満腹になると、神経が刺胞を発射させないようにコントロールしているのだ。

刺胞は体中どこにでもあるが、もっとも密なのは触手の表層である。種類がいくつかあり、生物によっても、一個体中の体の部位によっても異なる。イソギンチャク類の場合、骨格・骨片といった体の構成成分にしっかりとした形態的分類形質がないが、刺胞が分化は著しく、体の部位によって刺胞が異なる場合も多いので、刺胞が分類の指標として利用できる。

なかでも、ウメボシイソギンチャクやヨロイイソギンチャク類に見られる周辺球、タテジマイソギンチャクなどに見られるキャッチ触手、それに槍糸類の槍糸など、刺胞のためにとくに分化した器官では、その中の刺胞の大きさは種による特性を示している。イソギンチャクにとっては大事な生きる手段である刺胞は、種類によって、分類形質として大いに威力を発揮している。

①タテジマイソギンチャク。たくさんの触手の中の太くて大きいのがキャッチ触手。
②タテジマイソギンチャク。白くて細い糸が槍糸。
③刺胞の基本構造。この他に様々な形のものが知られている。左が未発射で、右が発射後。(小川数也より)
④ウンバチイソギンチャクの刺胞。
⑤体壁の突起にはびっしりと刺胞が存在する。
(写真①②③④⑤=内田絋臣)

(うちだ・ひろおみ/錆浦海中公園研究所研究員)

※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

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