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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【イモリとツメガエル】

 はじめまして。4月から橋本ラボの奨励研究員となりました西原と申します。こちらに来る前は、アフリカツメガエル胚を材料に色素細胞の研究していました。ここでは、アカハライモリとアフリカツメガエルの胚を使って、両種の原腸形成過程の相同点と相違点を見いだし、原腸形成過程の仕組みを明らかにしたいと研究を始めています(詳しくは橋本ラボのページをどうぞ)。
 私にとってはこの橋本ラボが2つめのラボで、初めて研究室を移るという経験をしました。基本的な部分は以前と変わりませんが、ラボが異なると、同じ実験をするにしても少しずつ方法が異なる部分もあったりします。マニュアル本などでも、同じ目的のために、いくつかの異なる方法が載っています。どの方法で実験を行うかは、ラボごとに流儀のようなものがある気がします。なぜその方法をとるようになったのか、きちんとした理由がある場合もあれば、たまたまその方法を使ってうまくいき、それが受け継がれている場合もあると思います。種間の原腸形成過程の違いも、それと似たようなものなのかもしれません。3つの軸を作り、神経を誘導する、これらの目的を達成するために、卵の大きさ、発生する環境など、それぞれに適した条件で進化し、必然的にできた違いもあれば、偶然によってできた違いもあるかもしれません。そのような違いがあっても、本質的な部分は共通しているおかげで、同じ目的が達成できるのではないでしょうか。
 ツメガエルとイモリの両者の原腸形成過程を比較するため、ツメガエルで行われてきた解析をイモリでも、イモリで行われてきた解析をツメガエルでもということで、まずは遺伝子という概念が登場する前によく実験に用いられていたイモリ胚で、分子生物学的な解析を行おうと試みています。ツメガエルで日常的に行っていた方法をイモリで行えばいいと軽く考えていたのですが、そうは甘くありませんでした。イモリは産卵数が少なく(ツメガエルが多すぎるだけかも知れませんが)、その上にインジェクションなどで少し手を加えると簡単に死んでしまいます。成体になると心臓を切っても再生するなど、驚異の再生能力を発揮するイモリですが、胚の時期はデリケートなようです。イモリ胚での実験手法を確立して行くのが当面の課題になりそうです。

[カエルとイモリのかたち作りを探るラボ 西原あきは]

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