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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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「うごく!演奏する!つくろう細胞の音楽!」ワークショップを終えて

2016年12月15日

岩崎 佐和

2016年10月15日(土)、BRH初となる細胞と音楽のワークショップが開催されました(催し報告ページ)。情報をご覧になった方々の中には「細胞と音楽には、どんなつながりがあるのだろう?」と思われた方も多かったのではないでしょうか。実は、細胞(生きもの)と音楽にはとても似ているところがあります。生きることそのものが音楽だという考え方もあるのですが、今回は少し脇において、両者を比較してみたいと思います。生きものの発生過程では、細胞が化学的なシグナルを分泌・受容したり、物理的な力を伝播することによって周囲の細胞と協調しながら複雑な体の形を作っていきます。一方音楽では、演奏者が様々な楽器や声などの聴覚情報、体の動きなどの視覚情報を介してコミュニケーションすることで、複雑な音楽が構築されていきます。そこで、もしその2つを重ね合わせたら、細胞について知識として理解していることとは全く違う方向から、細胞を感覚的に理解することに繋がるのではないかと考えたのがこのイベントのきっかけです。音楽家の西井夕紀子さんに話したところ、「ぜひ一緒にやりたい、細胞について知りたい。」と快く引き受けて下さったので、ラボのメンバーや表現セクターの皆さんに協力を仰ぎながら、BRH初となる細胞と音楽のワークショップをやることになりました。

ワークショップの大まかな内容は、音楽家の西井さんと私の2人で作っていきました。ラボには、細胞のダイナミックな動き(生命現象)を捉えた貴重な映像が数多くあります。そこで参加者の皆さんにこれらの映像をみて頂き、一番気に入った映像の音楽を作成するというプログラムを中心に置きました。この時、単に映像に対する音楽(BGM)をつけるのではなく、あくまで着目した生命現象に対しての音楽を作るように持っていくことにしました。また、小田研究員の「一個の細胞の気持ちになったらそれが音楽になると思う」という鶴の一声から、ワークショップでは「自分が一個の細胞になったつもりで」という合い言葉を軸に全てのプログラムを組もうということになりました。

イベント当日は、事務的な作業に終われ心の準備もままならないまま、あっという間に過ぎさってしまいました。本当に気持ちのよい秋晴れの日に、約30名の参加者とスタッフに囲まれ、BRHの展示ホールに細胞になりきった皆さんの音が響き渡っていました。音楽家の西井夕紀子さん、大塚惇平さん、ArisAさんの3人による音楽の準備運動(音の受け渡し・息を合わせる等)、小田研究員のいつもに増してアクロバティックな解説はとても好評でした。チームに分かれて音楽を作成する際も、和気あいあいと笑顔が溢れていました。(当日の様子はダイジェスト動画にまとめましたので、お時間の許す方はそちらもぜひご覧下さい。また、各チームごとの映像+音楽作品も素晴らしいのでぜひ。その1 その2 その3 その4)

大人も子どもも関係なく、それぞれの目線で細胞とは何か、生きものとは何か、自分とは何かについて感じられる時間と空間になったように思います。思いっきり遊んだ3時間。参加者の皆さん、スタッフの皆さん、関わってくださった全ての皆さまへ、本当に有り難うございました。いつかまたこのような企画が出来る日を夢見て、実験・研究の方も精進します。


(撮影:齊藤真吾)

(裏話)

思い返せば、個人的には企画を進めて行く中で失敗も沢山ありました。詰めが甘く質問にハッキリと答えられなかったこと。ミーティングが円滑に運営できず、結果やりたいことがうまく伝えられず、その原因を「なんでわかってくれないのだろう」と相手に押し付けてしまったこともありました。反省しています。いつかまたもっと楽しいイベントが企画出来るよう努力していきますので、これからも暖かいご支援をよろしくお願いいたします。

[ ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 岩崎佐和 ]

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